中共上層部で大規模な粛清? 習近平氏 安全への強迫観念

2023/09/21
更新: 2023/09/22

 

習近平氏の安全への強迫観念と兵士への好意の背後

最近、国防部長の李尚福氏が逮捕され、最も高位の軍事委員会副主席の張又俠氏が公の場に姿を現さなくなっているなど、中国共産党(中共)の軍部ではさまざまな出来事が連続して起こっている。

これらの出来事は、習近平氏の安全への懸念と密接に関連していると考えられ、中共の上層部の間で大規模な粛清が進行中であることを示している。

上層部の権力闘争と並行して、末端の兵士間にも変化が見られる。9月15日、中共軍のWeChatアカウントには、習氏が第78集団軍を視察した際のスピーチを引用し、兵士の悩みを解決するとの声明が出された。

記事によれば、軍の末端での問題は増加しており、新しい装備や専門分野が導入され、兵士は新しい職務に戸惑っている。さらに、転属後の既婚の兵士は、家族との生活や子供の入学、家族の就職などの問題に直面している。

軍は長期の野外訓練が増えており、兵士の日常生活のサポートの強化が必要である。これらの問題が適切に解決されなければ、兵士の訓練、業務、生活に悪影響が及び、戦闘力の向上や部隊の安定発展に障害となる。

中共軍の最近の動向について、9月4日付の「人民解放軍新聞」の論説では、部隊の野外での常駐や実弾射撃、実際の爆発物の投射訓練に取り組む様子が報じられている。

この中で「安全バルブをより確実に固定する」との言及があり、装備や弾薬の使用の頻度が高まっていることがうかがえる。

また各部隊においては、安全対策の具体的な策定やリスクの評価、潜在的な危険性の調査が必要とされるであろう。論説の中で「安全」という言葉が33回も使用されているのは、その重要性を示すものであると考えられる。

中共軍に詳しい人の間では、中共軍が兵士に対して銃の所持を制約していることが知られている。一般の兵士は銃に触れることが許されず、代わりに基本的な訓練、例えば布団のたたみ方や歩行方法の習得が強調されている。

また、銃を持って歩哨を立てる際の取り決めとして、2人の兵士がいた場合、1丁の銃しか持たせず、1人が銃を、もう1人が弾薬を持つという制約がある。

これは米国の慣行とは異なる。米国の州兵はニューヨークのグランドセントラル駅での勤務時、銃と弾薬を装備している。

中共兵士の銃撃事件

このような取り決めが中共軍において存在する背景には、中共の公式見解では、白宝山の事件がその原因とされている。囚人だった白宝山は1996年に番兵を殺害し、半自動ライフルを奪取。その後の追跡戦で5人の警察官を殺害し、8人を負傷させる事件を起こした。

しかし、その理由だけでは完全には説明がつかない。中共も、米国の兵士たちと同様に、それぞれ銃と弾薬を所持する能力があったはずである。

それにも関わらず、お互いを監視する必要が生じたのは、何か別の背景があるのだろうか。中共内部で発生し、中共を不安にさせたある大事件があった。それが田明建という軍人の事件である。

彼は単独で北京の大使館地区近辺で、大勢の武装警察や警官と対立した。彼の片手での弾倉交換の技術は、世界中の特殊部隊から称賛されている。

田明建は、北京の軍隊に所属する中尉副連隊長であり、「射撃の神」とも称されていた。1994年、彼の妻は第二子を妊娠していたが、一人っ子政策により、当局によって強制中絶され、その結果、母子ともに亡くなった。

これに怒った田明建は、同年9月20日に軍の武器庫からAK47の改造版である81式自動歩槍(小銃)と200発の弾薬を盗み出し、パレードのスタンドの下に隠し、軍の高官たちが視察中に、4人の将校を射殺した。

その後、彼は車を乗っ取り、北京の中心部の建国門に突入し、乱射を開始した。彼は中共の軍や警察と激しい銃撃戦を繰り広げた。弾薬が尽きた後、彼は最後の1発で自殺した。しかし中共は、彼が狙撃兵によって射殺されたと発表した。

事件の死傷者は合計で75人にのぼった。少なくとも4人の中共の兵士、17人の市民が殺害され、公安警察の死亡数は不明だ。また事件の最中に車で通りかかったイラン大使館の書記官と4人の子供のうち1人が死亡し、2人が負傷した。この事件を受けて、イラン政府は中共に抗議した。

この事件の結果、北京軍区の副司令官であり、北京駐屯地の司令官であった何泉氏や政治委員の張宝康氏をはじめ、数百人が降格され解雇された。田明建が所属していた3師団12大隊は、解散に追い込まれた。

類似した兵士の内部対立や、銃を持って地域に乱入するケースは実際には少なくなかったが、公になるのはごくわずかだった。

その一例として、2011年11月9日、瀋陽軍区に駐在する吉林市の65331部隊の4名の若い兵士が、独自に兵舎を離れるという事件があった。

ネットユーザーの情報によると、原因はその中の分隊長・楊帆の田舎の家が強制的に取り壊され、家族が地方政府に抑圧されたため、楊帆は銃を盗み出し、復讐のために家に戻ったようだ。残りの3人は友情から彼に同行した。

4人はライフルと約800発の弾薬を所持していたが、途中で特殊警察に止められ、両者の間で銃撃戦が発生した。4人の兵士のうち3人はその場で射殺され、1人が負傷して逮捕された。

明らかに、習近平氏がこの度、78軍を視察した際のスピーチの後で、軍は兵士の問題を解決することを強く強調している。これは、内部の問題を防ぐためだろう。

しかし、本当にこれを完全に解決することはできるのだろうか? それは不可能だと思う。

一方、中共の地方の腐敗した官僚たちが民衆を苦しめたり、民衆の家を強制的に取り壊したりする事例が広がっており、軍もこれに対処することができない。

また、中共軍の中では、古参の兵士が新兵をいじめたり、軍の役人が賄賂を受け取って何もしないという問題も存在している。このため、中共はこれまで兵士に銃を持たせることを恐れていた。

しかし、習氏は共産党を守るため、国内の危機を転嫁し、中共の歴史に自分の名を残すために、引き続き台湾への攻撃の準備をしていることが見受けられている。

これは、有名な歴史学者、辛灝年氏の予測している「中共に台湾を攻撃する勇気はないが、滅亡寸前の時、攻撃するかもしれないものの、攻撃すれば滅亡する」というのと一致している。

なぜなら、対外戦争が起こったとき、銃と実弾を持つと、中国の人々は反乱を起こすだろうから。

本当にそうなるのだろうか? 引き続き注目すべきだ。
 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
秦鵬
時事評論家。自身の動画番組「秦鵬政経観察」で国際情勢、米中の政治・経済分野を解説。中国清華大学MBA取得。長年、企業コンサルタントを務めた。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)、新唐人テレビ(NTD)などにも評論家として出演。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。