福島第一原発の処理水放出をめぐる中国側の不当な輸入規制や嫌がらせ行為が続くなか、岸田首相から野党党首に至る日本の政治家は空前の結束力を見せている。「#食べて応援」を合言葉に、風評被害に遭う地域の食材を積極的に献立に取り入れ、党派を超え一丸となって圧力を跳ね除けている。
「福島は美味かった!」
手慣れた手つきで伊勢海老をさばく写真をX(旧ツイッター)に投稿したのは、立憲民主党の泉健太代表だ。29日に福島県産の商品を販売するアンテナショップを自ら訪れ、食料品を購入した。
「昨夜は、福島の魚と野菜を料理して食卓へ。香港で数ヶ月前から買い控えを受けていた福島の酒も。どれも美味しかったですが、私の一推しはメヒカリの唐揚げ。コンビニの揚げ物コーナーにも並べてほしいほどの食べやすさです!」と特産品を宣伝。泉氏の行動は「党派を超えた福島支援」と評され、「いいね!」を1万件以上獲得した。
自民党立候補者で経済産業省元職員の門ひろこ氏は「自民党東京8区支部長としては不適切なコメントかもしれません」と前置きした上で、「福島産品の応援は党派を超えて政治サイドでも取り組むべき課題である中、野党第一党の党首自ら支援くださること、元経産省職員として心より感謝申し上げます」と泉氏の行動を称えた。
立憲民主党で会津出身の小熊慎二衆議院議員は、中国からの迷惑電話について強い憤りを見せた。「愚劣で許されない行為だ。また、中国人自身が自らを貶める行為であり、国際社会に中国の恥を自らが喧伝している事を自覚すべきだ」と主張。在日中国大使館へも独自に問い合わせをしているという。
岸田首相、福島産食材でランチ
岸田文雄首相は「三陸常磐ものを食べて応援」と動画で発信。処理水放出後の8月29日に水揚げした福島県の水産物を取り入れた昼食を岸田・西村・小倉・鈴木の4大臣が堪能した。献立はヒラメ、スズキ、タコのお造り、白米、豚しゃぶ、果物のデザートなど多様な食材が登場。風評被害を払拭するため、官邸は駅弁やネット通販などで旬の食材を宣伝している。タグには「#STOP風評被害」とつけた。
大阪府は31日から、大阪府庁の食堂で福島県産の魚介類を取り入れたランチを提供する。吉村洋文府知事は「科学が風評に負けてはならない。(中略)一過性のイベントではなく、これから毎日少なくとも半年〜1年程度行います。明日、僕も食べにいきます。皆様も良かったらどうぞ」と広報した。
共同通信などによれば、25日に開かれた全国知事会では、福島県産を取り入れたランチを都道府県庁で提供するとの吉村氏の案に、宮城県や青森県の知事から支持する声があがったという。
日本産の水産物の輸入停止について、30日の自民党の会合では世界貿易機関(WTO)への提訴を検討する意見が出された。NHKによると、堀井巌・部会長は「極めて遺憾だ。政府は国際会議や二国間会談の機会に日本の取り組みの正当性を積極的に発信してほしい」と述べた。
国民民主党の玉木雄一郎代表も、輸入停止は「WTOに提訴すべき案件だ」と発信。「中国による科学的根拠のない輸入禁止は自由貿易体制を揺るがす行為であり政府は毅然とした対応を取るべき」と主張した。
松野官房長官は記者会見で、「中国側には深刻化防止のため適切な対応を強く求めていく」とし、WTOの枠組みでの対応を検討していることを明らかにした。
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