中国の大手スーパーマーケット・チェーン店「カルフール(家楽福)」の存続危機は以前から取り沙汰されてきたが、北京市内のカルフール店だけでも、最近の2カ月以内で12店が、相次ぎ閉鎖したことがわかった。
カルフールは1958年創業。フランスにグループ本社をおくスーパーマーケットのチェーン店である。中国には1995年から進出し、縁起の良い漢字「家楽福」の名称で、北京・上海・天津・青島・広州・大連などの都市で店舗を展開してきた。
2008年3月、当時の仏大統領であったサルコジ氏が、いわゆる「チベット騒乱」を武力鎮圧した中国政府を非難すると、中国民衆による「カルフール不買運動」や各種の営業妨害、商品の持ち去り、店舗の破壊行為などが起こった。
同年5月12日に四川大地震が起きた。カルフールが義援金を贈ったことで、不買運動などはひとまず沈静化する。しかし、その後も中国メディアに煽られた民衆の「異様な行動」に直面し、ついに2019年6月、カルフールは家電量販店大手・蘇寧電器グループに中国の全店舗を売却し、中国市場から撤退した。
したがって、現在、中国にある「家楽福(カルフール)」は、名称はそのまま引き継いだものの、完全に中国資本の店舗になっている。
一時は321店あった中国カルフールは、中国のスーパーマーケットチェーン上位3社にも数えられた。しかし、業績悪化のため、店舗数は減少の一途をたどり、昨年6月末には半分以下の151店となった。
昨年3月末には、1万6,000平米の面積を誇り「アジア最大のスーパー」とも呼ばれたカルフール中関村店(北京市)まで閉店している。
昨年末までチェーン全店で最高の売り上げを誇っていたカルフール上海万里店でも、今は店内の商品が少なくなり、売り場によっては「棚が空っぽ」などの悲惨な状況が見られている。
また、今残っている複数の店舗でも、会員顧客向けプリペイドカードの使用制限が始まっている。
中国では、カルフールに限らず、米小売り大手ウォルマート、アリババグループ傘下の大型スーパーマーケット「大潤発(RT-Mart、ダーユンファ)」、テンセントが出資する中国小売大手の「永輝超市(Yonghui Superstores)」、中国スーパー大手・聯華超市(Lianhua Supermarket)など、いずれの大手スーパーも過去2年において閉店が相次いでいる。
主な原因として考えられるのが、中国の景気後退にともなって国民の収入が減少し、消費力が低下したこと。および「消費傾向の変化」だと専門家は見ている。
昨年12月初めに、約3年続いた「清零(ゼロコロナ)政策」は解除されたが、中国経済には致命的な痛手を残した。
その結果、中国の中産階級にあたる多くの消費者のなかには、今後何が起きるか全く予測不可能な中国において、自身と家族を守るために「今あるお金を、無駄には使わない」という消費傾向の変化が生まれた。
北京市内のカルフール店舗が2カ月内で12店閉鎖されたことも、そうした背景と無関係ではない。かつて盛況を呈していた「中国市場」は、完全に昔日のものとなった。
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