台湾の有名歌手が中国で心臓と肝臓の同時移植手術を受けたという報道に続き、中国の病院が早産児の腎臓を摘出して成人に移植した実例が移植専門誌に掲載されたことで、台湾社会に大きな衝撃が広がっている。

生後1日と3日、臨床現場からの疑問と怒り
問題となっているのは、上海交通大学附属仁済医院の医師らが2023年1月11日にアメリカの医学誌「American Journal of Transplantation」に投稿し、掲載された論文だ。
この論文では、生後わずか1日と3日という二人の新生児の腎臓を、成人の末期腎不全患者に移植した2例が紹介されている。
この論文に対して、米ルイジアナ州立大学の健康科学センターの新生児科の副教授は、ドナーとなった早産児の1人は瀕死状態ではなく、通常の胎児反応も見られたと明かした。
台湾の産婦人科医でもあり、衛生福利部・政務次長の林静儀氏は12日、問題の論文や中国の医療について自身のFacebookを通じて次のように強く非難した。
「早産児の医療はガラス細工のように慎重で、どんな困難に直面してもなんとかして小さな命をつなげようとするのが医療者の本分だ」「その小さな命を『器官供給源』とみなすなんて…」「吐き気がする」
林政務次長は中国の病院での延命措置の打ち切りの判断に強い疑問を呈した。

出生前から狙われた命
米アリゾナ大学のZain Khalpey医学副教授はエポックタイムズの取材に対し、「新生児腎移植のマッチングは数週間から数か月を要する」とし、出生前にすでに患者とのマッチングが行われていた可能性を強く指摘した。
手術が行われた仁済医院では、これまでに22例もの新生児腎移植が行われたと報じられており、その移植対象には25歳や34歳の成人も含まれている。Khalpey氏は「これはまるで臓器の製造工程だ」と組織的な器官調達の可能性を懸念している。
「新生児をドナーとするやりかたは到底受け入れられない、なぜならば彼らには発言権すらないのだから」とKhalpey氏は嘆いている。
中国ではかねてより「臓器移植ビジネス」の実態が指摘されてきた。そして中国の代理出産業界には、患者の血液型に合わせた「オーダーメイド胎児」が作られ、出生と同時にその器官を摘出・移植するという恐るべき手口が存在する。
今年3月、タイのメディアは「タイの数百人の女性が中国の犯罪組織によって騙され、監禁され、強制的に代理出産や卵子の提供をさせていた」と報道している。代理出産をさせられていた女性は救出後、中国人の女性が「あなたの腹中の胎児が必要だ、自分の子供のための予備の臓器なんだ」と接触してきたこともわかった。

人道と医学倫理の岐路に立つ世界
中国はかねてから移植産業の国際的な規制に違反してきたと非難されてきた。
2022年4月、米国の医学誌「American Journal of Transplantation」は1980年から2015年の間に中国の学術誌に掲載された2838本の移植論文について分析した結果、中国の移植外科医が国際公認の死亡ドナー規則に違反していたことが判明した。つまり、心臓や肺などの臓器はドナーが「脳死」と宣告される前に摘出されていたというのだ。
中共は過去にも法輪功学習者やウイグル人、宗教的少数派からの強制的な臓器摘出が国際的に問題視されてきた。今回の新生児をドナーとした移植は、それに続く「新たな臓器狩り」の形とも捉えられる。
中国の臓器移植の「倫理なき進行」に対し、国際的な監視と行動が今こそ求められている。
台湾では「中国で臓器移植をしてはいけない」といった声が高まりつつある。日本はどうか。
乳児を「臓器の資源」にする発想の国がすぐ隣国にある。私たちの沈黙もまた共犯となるのではないか。

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