英国の複数の著名な学校が中国で運営する「インターナショナルスクール」。それらは英国教育機関の看板を使って中国人学生を募集している。
インターナショナル(国際的)を謳っているが、その教育は「愛国的な洗脳教育」つまり中国を祖国として熱狂的に支持させるばかりで、調和のとれた国際感覚を学生に身に着けさせる教育とはほど遠いことがわかった。英国の大衆紙「デイリー・メール」が報じた。
同紙によると、近年中国では、77校ほどの「英国ブランドの私立学校」が運営されている。
これらの学校は「インターナショナルスクール」の看板を掲げていながら、実際には生徒に「軍服」を着せ、中国を賛美する歌をうたわせるほか、閲兵式などでみられる軍隊式の歩調をとった歩き方まで練習させられているという。
米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)は先月23日、公式ツイッターに、これら「中国にある英国学校」の様子を捉えた動画を投稿している。
投稿した動画のなかには、幼稚舎クラスとみられる幼い生徒が、迷彩服を着こみ、中国を賛美する歌をうたい「敵」に向かって銃を構える、といった戦闘の演習をする様子も映されている。
また、例えば福建省福州市長楽区に位置する英国の私立学校「賽徳文学校(Sedbergh School)」では、低学年の生徒に「僕は小さな軍人」「大きくなったら祖国を守る」と言わせるような教育を施している。同校の1年間の学費は、およそ20万元(約392万円)である。
また、百年以上の歴史を持つ英国の名門私立校クランリー・スクール(Cranleigh School)が、中国武漢に開設した「康礼高級中学(日本の高校に相当)」の動画では、軍服を着た生徒たちが、手に中国国旗や模擬銃を持ち、兵式のステップを踏みながら「祖国を守る!」と叫んでいた。
匿名を条件に取材に応じたこれら英国学校の元教師によると、歴史の授業では中国のいわゆる「祖国統一」および香港や台湾に関する「正しい認識(中国側が主張する内容)」について教え、生徒に徹底して「台湾は祖国(中国)の神聖な領土だ」と教育するという。
さらには、中国の若者のなかに「マルクス主義的な信仰」を確立するため、努めて「習近平思想」を教えている。
英国の学校といっても、授業で使用する教材はすべて中国の出版物しか使用できない。うっかり「中国政府が好まない発言」をすることを恐れている教師も多いという。
1997年7月1日に、1世紀以上にわたり英国の統治下にあった香港が中国に返還された。
返還にあたって、北京の中国共産党政権は、鄧小平氏が提示した一国二制度(一国両制)をもとに「社会主義政策を将来50年間(2047年まで)香港で実施しない」ことを約束していた(中英共同声明)。
しかし周知の通り、50年のほぼ半分である25年で、北京政府の強権的な統治は香港を呑み込み、今や香港の自由と民主は「風前の灯」となっている。
2017年、中国政府は「もはや中英共同声明は意味を成さない歴史的な文書」であると表明した。つまり中国側が英国に対し、まるで英国女王の顔に泥を塗るように、一方的に「一国二制度」の約束を反故にしたのである。
そうした最近の歴史的経緯とはまるで無関係のように見える「中国の英国学校の極端な親中ぶり」には、実際、不可解さを禁じ得ない。
英国の人権団体「香港ウォッチ」の最高責任者・ベネディクト・ロジャーズ氏は、「中国共産党は英国の学校を利用して、中国の学生に中国共産党の思想を植え付けている。これは非常に危険なことだ」と警鐘を鳴らした。
さらに同氏は「英国の学校は、この政権(中共)と連携すべきではない」と主張した。
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