「おから工事の家はいらない!」 中国深セン市で住宅購入者が「返金」を求めて大規模抗議

2023/04/03
更新: 2023/05/26

広東省深セン市で1日、48階立ての高層マンション「誠勤達正大誠」の分譲住宅購入者が、あまりにひどい欠陥住宅であることに怒り、解約と返金を求めて大規模な抗議を行った。

抗議者は口々に「退房(トィファン)」と叫んでいる。退房とは「こんな部屋は要らない。突き返す!」の意味で、もはや欠陥箇所の部分的な修理を求めるのではなく、購入自体を解約して「払った金を返せ!」と要求しているのだ。それはまさに購入者が、販売業者と施工業者に対して、全く信用していないことを意味している。

購入した住宅が欠陥だらけであった理由は、すさまじい「手抜き工事」だったからだ。

中国で欠陥住宅を無数に生み出してきた手抜き工事は、豆腐のおから(豆腐渣)のように、手で砕けるほど脆いことから「おから工事豆腐渣工程)」と呼ばれている。

住宅の品質や企業の社会的責任よりも、利益追求をはるかに優先する建築業者が絶えないことは、中国では以前から大きな社会問題となっていた。

問題となったこのマンションでも、住宅購入者によって撮影された数々の明らかな「欠陥」を捉えた動画が、ネット上に流出している。なんと素手で、いや、指一本でコンクリート壁に穴があくという、信じがたい「おから工事」である。

ほかにも、排水管の亀裂、天井や電気系統の欠陥、壁などあらゆる所からの水漏れ、ガラス窓が外れそうになっているなど、とても「新築物件」とは思えないようなレベルである。

さらに他の動画には、天井から電線らしきものが束になってぶら下がっていたり、部屋のなかに脱落した建築材などが放置されているといった理解しがたい光景も映されていた。

中国で、住宅の「おから工事」が社会問題となってから、10数年が経つ。2008年5月12日の四川大地震(汶川大地震)では、規定数の鉄筋が入っておらず、粗悪なセメント材を使った典型的な「おから工事」の校舎が完全崩壊して、1万9千人ともいわれる小・中学生が犠牲となった。

その悲劇を知らない中国人はいないはずであり、住宅を購入する側もそれなりに物件の品質を吟味したに違いないが、売り手のプレゼンテーションが巧妙(あるいは狡猾)だったためか、このような結果となった。

また、このマンションは、手抜き工事だけでなく、通路が狭すぎるため災害時の避難経路が確保できないなど、設計上の問題もあるという。

「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深セン市の光明新区に位置する同マンションの販売価格は、1平方メートルあたり5万元(約96万円)である。 しかし、あまりに恐ろしくて、とても住める物件でないのは明らかだ。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。