今年3月21日は、両陣営の対立が一層鮮明になるとともに、国際情勢の大いなる変局の到来を感じさせる「特別な日」となった。
この日、訪露した中国の習近平国家主席はプーチン大統領と会談。同じ日に、インド訪問を終えた岸田首相はウクライナを電撃訪問した。こうしてウクライナの事態を巡る国際社会は、両陣営がそれぞれ結束を固め、それによって対立が一層鮮明になる状況が現れてきた。
ロシアと距離をおき、中国に対峙するインド
インドは、ある意味で中国と似ているかもしれない。例えば、ソ連崩壊後のロシアと密接な関係あることや、その主要な軍備はいずれもロシアから購入し、エネルギーもロシアから大量に輸入している。さらには、ウクライナ戦争に関する国連での度重なる投票にも、インドは棄権してきた。
しかし、なぜか国際社会は終始、インドではなく、中国だけをロシアの「天井なし」の非公式な同盟国と見なし、中国を既存の国際秩序にとっての最大の脅威としている。
その理由は簡単で、インドは中国の敵だからである。しかもインドは民主主義国家であるため、西側からすれば、仲間に引き込みたい対象ですらある。
目下の「インドとロシアの関係」は平たく言えば、インドからすれば「旧友をあまり怒らせたくない」というところだろう。だが「メリットが零(こぼ)れ落ちているのなら、拾わない手はない」といったこともある。
一方の中露関係は、いわば結託して共に悪事を働く仲間同士。あるいは「ナイフで刺す役(ロシア)」と「そのナイフを手渡す役(中国)」に例えることができる。
しかし最近では「米印が協力して中印国境の中国軍を打ち負かした」という、従来の印露関係に大きな変化をもたらしかねない出来事が発生している。
そこへ岸田首相のウクライナ電撃訪問なども重なり、今や米露間、日露間においては非常に緊張した空気が流れている。
そのような中、米メディアは再度「中国はロシアに大量のドローンを援助している」と、その内幕を暴露している。これはもう、大きな嵐が、いまにも吹き始める予感がするではないか。
「正常な国」へ移行する日本
また、最近の日本の外交や軍事領域での一連の動きも尋常ではない。
インド太平洋地域の安全保障問題において、従来の日本は米国に追随する参加者であったが、いまや「地域問題の主導者」へと、どんどん役割が変わりつつある。これは日本が急速に「正常な国」へと移行しようとしている傾向であるが、中国からすれば、それは決して望まない局面と言える。
例えば、16日に行われた日韓の首脳会談の結果、日韓関係は改善が期待され、また20日に行われた日印の首脳会談では、中露への対抗を念頭とする連携の強化が図られた。
岸田首相はインドのモディ首相との会談中に、「ウクライナへの侵攻を続けるロシアや中国などを念頭に『法の支配に基づく国際秩序を守る重要性』を取り上げたい」と説明したうえで、モディ首相に5月に広島で行われるG7サミットへの参加を招待したところ、モディ首相は参加する意向を示したと報じられている。
なお、岸田氏の言う「法の支配に基づく国際秩序」というのは、米国主導の、中国とロシアの侵略戦争に対抗するための政治的主張の基盤である。
インドがそのような「国際秩序を守るため」の議論がなされる場への参加を承諾することは、ロシアの侵略行為に対して明確に反対する意を示したことに等しい。
インドの場合、制裁といった具体的なアプローチにおいては、必ずしも参加するとは限らないだろう。しかし、それでもソ連からロシアに至る数十年にわたる友好関係の歴史を持つインドにとっては、ここまで反対の意思表示ができるという点だけでも十分得難いと言える。
「中露が手を組み、米国とその同盟国に対抗する」という大きな局面のなかで、インドの役割も大きな変化を迎えている。
米メディア「U.S. News」によると、昨年末、米国はインド軍と前例のない情報共有を行い、その結果インドは国境の紛争地域での中国軍の侵入を見事に撃退できたという。
この成功例は大きいものではないが、米印間の軍事分野での協力がより実践的なものになったいま、インド政府にとっては「ロシアの武器装備に頼ってきた従来の方法で本当に良いのか」ということを考えるきっかけとなっただろう。
インドのロシアに対する態度の変化は、すぐには金融や貿易などの分野での制裁やデカップリングなどに現れなくても、その態度の転換は、インドのような「中立路線」を行く他の国にとっては、ひとつの見本となる。
「平和の使者」を演じる中国
米側がこのようなニュースを発表したことは、世界に向かって「中国共産党の脅威に直面した時に、米国の援助は有効だ。だから、恐れることはない。中国は彼らが自慢するほど強くはない」と伝えているようなものでもある。
インドまで(西側陣営に)傾いてきたなか、中国は、とっくに見透かされているとも知らず、依然としてその無理な「脚本」通りに、あたかも「平和の使者」であるような芝居を続けている。
中露首脳会談後に宣言された戦略パートナーシップを強化した「共同声明」では、中国側の平和案を4文字でまとめるとすれば「領土割譲」だ。
しかし、これはゼレンスキー氏をはじめ、米国やNATO、そして日本やインドにとって、受け入れられないことであるのは明白だ。
もし国際社会が、このような「偽の平和」を受け入れれば、今後の世界のルールは「取ったもの勝ち」と是認するようなものである。「何をしても、何の悪い結果もなく、責任も取らされない」となると、これこそ本当の天下大乱の始まり。人類の末日の到来となるだろう。
ウクライナ情勢をめぐり、対立を一掃鮮明にする「中露」と「西側諸国」。
このようななか、中国共産党が解体されなければ、この大いなる変局は迅速に無数の人の未来の運命に影響を与えるだろう。今後10年間、世界を巻き込むこの「台風の目」は、台湾とウクライナにある。
(翻訳・李凌)
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