ぐらつく中国「パンダ外交」…返還相次ぐ 高額なレンタル料などが重荷

2023/03/17
更新: 2023/03/17

日本やフィンランド、英国、米国などは今年、貸与していたジャイアントパンダの中国返還を発表した。米国と台湾ではそれぞれ1頭ずつジャイアントパンダが病死している。

日本、パンダ4頭返還

ジャイアントパンダのオス「永明(えいめい)」と双子の娘「桜浜(おうひん)」「桃浜(とうひん)」を載せた輸送機が2月22日夜、日本を離れた。出発の前日には、和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」でお別れセレモニーが開かれた。

永明は保全および日中共同繁殖研究のため、桜浜と桃浜は性成熟の年齢に達し繁殖のために中国に返還される。

1992年中国・北京で生まれ、1994年に来日した永明。2008年に亡くなった「梅梅(メイメイ)」との間に6頭、「良浜(らうひん)」との間に10頭、計16頭の繁殖に成功した、いわゆる「スーパーパパ」だ。

3頭返還の前日には、上野動物園のジャイアントパンダ「シャンシャン」が返還された。シャンシャンは2017年6月に日本で生まれた。日中間の協定により日本で生まれた子パンダの所有権も中国に帰属する。新型コロナの感染状況により、返還が5度延期されていた。

フィンランド、高額なレンタル料で赤字膨らむ

1月下旬、フィンランドの民間動物園がジャイアントパンダのルミとピュリュの飼育費が払えず、返還する準備をしていると発表した。

2頭は、中国の習近平国家主席が2017年のフィンランド国賓訪問時に、フィンランドと15年間の貸与契約を結んだ後、2018年1月に貸し出された。

フィンランド中部に位置するアータリ動物園は、パンダ効果による観光客数の増加を期待したが、パンデミックの影響で客足が途絶え、多額の赤字が膨らんだ。

フィンランド政府は、2021年に動物園に20万ユーロ(約2800万円)の一時支援をしたが、500万ユーロ(約7億円)の助成金の申請を却下した。

15年間の貸与契約で、動物園は毎年中国側に高額なレンタル料を支払っている。そのうえ、パンダ2頭の飼育費も動物園が負担する。

英国、行き詰る繁殖

英国も1月にジャイアントパンダの返還を発表した。1月4日、英スコットランドのエディンバラ動物園は今年10月末までにパンダ2頭を中国に返還すると発表した。

2011年12月に来園したヤン・グァンとティアン・ティアン。同園は、レンタル料として年間75万ポンド(約1億2000万円)を中国側に支払ってきた。

2頭は自然交配は行わず、計8回の人工授精を行ったが妊娠しなかった。のちに、ヤン・グァンは精巣がんを発症し、手術の末に去勢された。

10年の貸与契約は2021年に満了予定だったが、新型コロナの感染状況により2年間延長された。

米国のパンダ、突然死で米中関係にひび

昨年12月21日、米南部テネシー州メンフィスの動物園がヤーヤーとルールーを中国に返還し、20年間の賃貸契約を終了すると発表した。

2頭は4月7日に返還される予定だったが、ルールーは2月上旬に25歳の若さで突然睡眠中に死亡しているところを発見された。

ルールーの死亡報道後、中国メディアは米国を批判。中国のネットユーザーからヤーヤーの早期の返還を求める声があがった。

米中対立がさまざまな分野に広がる中、ルールーの突然の死は二国間関係の悪化を助長させた。

しかし、中国側が専門家チームを派遣した結果、ルールーの死因は心臓発作と推測された。いっぽう、ヤーヤーは皮膚病による脱毛がみられるも、食欲があり体重が安定していると診断された。

台湾のパンダ、悪性脳腫瘍で死亡

台中関係が良好だった2008年に、中国から台湾の台北動物園にジャイアントパンダの「団団(トアントアン)」と「円円(ユエンユエン)」が寄贈された

トゥアントゥアンは昨年8月末、てんかん発作を繰り返すようになり、検査したところ悪性脳腫瘍に罹患していたことが分かった。

医療チームは、回復の見込みがないと判断し、麻酔を投与して安楽死させた。

揺らぐ「パンダ外交

中国政府は、1957年から1982年まで9か国にあわせて23頭のパンダを寄贈していた。

1982年以降は、野生パンダが絶滅の危機に陥っていることを理由に贈与を中止し、有償貸与が始まった。パンダは10年間の「共同研究」のために貸与国に滞在し、貸与国は年間1億円以上のレンタル料を支払う。

しかし、その多額なレンタル料から貸与に渋りを見せることも少なくない。2008年、当時の東京・石原都知事は「高い買い物だ」と貸し受けに難色を示し、英メディアも「パンダの飼育には英国人の血税が大量に使われる」とパンダ不要論を展開していた。

また中国政府の「ソフトパワー戦略」として利用されていると指摘されるほか、各国の対中関係の悪化を背景に、パンダ外交はぐらつきが隠せなくなった。

Ellen Wan
2007年から大紀元日本版に勤務しており、時事から健康分野まで幅広く携わっている。現在、記者として、新型コロナウイルスやコロナワクチン、コロナ後遺症、栄養学、慢性疾患、生活習慣病などを執筆。
Shawn Lin