中国湖北省武漢市の市政府庁舎前で8日、医薬品補助の削減を伴う制度改革に反発する退職者らが抗議デモを起こした。米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)などが伝えた。
市内の退職者ら1万人以上が集まり、今月1日から実施された医療保険制度の改革をめぐり抗議した。「毎月260元(約5000円)だった医薬品補助が83元(約1,600円)に減らされた」として、市民らは政府に説明を求め、「元の基準へと戻すよう」訴えた。
市内の200万人近い退職労働者がこの政策の影響を受けているとし、「政府が問題を解決しない場合は、今月15日により大規模な抗議行動を計画する」とある集会参加者は明かした。
武漢市民の高さんは大紀元の取材に対し、「デモ参加者は主に市内の各業界の低層の退職労働者である。彼らの収入は比較的低いため、今回の医療改革は大きな影響をもたらした。 以前の補助金でなんとかやっていけたが、改正後の80数元だと薬一つ買えない」と語った。
高さんによると、現場でデモをする群衆の中には、当局が葬儀費用を減らしたことを抗議する人もいたという。ここ数年で退職者の葬儀費用は元の7万元(約135.6万円)から1.9万元(約36.8万円)へと減額された。
別の市民の張海さんも大紀元の取材に対し、「高齢者たちは自発的に政府庁舎前で抗議したのだと思う。過去3年に及ぶゼロコロナで、政府はもうお金がない。だからこそこのようないわゆる医療改革を導入したのでは」と述べた。
なかには、「人民はもう目を覚ますべきだ。PCR検査からワクチン接種強制、今度は葬儀や医療保険資金にまで手を付けた。もうたくさんだ」と大紀元の取材で怒りを露わにした市民もいた。
政府は「強盗だ」
中国国内の抗議運動の画像や動画をツイッターで配信するアカウント「李老师不是你老师(邦訳:李先生はあなたの先生ではない)」は8日、ある武漢の高齢女性による医療保険改革をめぐる苦情の録音を投稿した。同録音は武漢の高齢者圏内で広く拡散されているという。
録音ファイルの中で、高齢女性は「医薬費の払い戻しを受けられる金額は表向きは年間4000元(約7万7000円)となっているが、実際には1300元(約2万5000円)しか受けられない。そのうえ、有用な薬は医療保険リストに載らない役に立たない薬ばかりに医療保険を使えるのが現状。ほとんど自費医療に等しい」
「医療保険の金はそもそも自分たちが在職時に毎月会社と自分たちのポケットマネーから積み立ててきたもの。政府に恵んでもらったお金ではない。それなのになぜ自分のお金ももらえないのか」と訴えた。女性は政府による政策について、「一方的な契約違反行為だ」「強盗だ」などと痛烈に罵った。
武漢でのデモをめぐり、ネット上には「今年は中国民衆にとっての抗議の年だ。白紙運動の成功は今後の抗議の波に火をつけた」「新一線都市である武漢ですらこのあり様だ。他の地方都市や農村のことを考えると、悲しくなってくる」などの声が上がっている。
なかには、「アフリカへの援助では一度に数百億もばら撒くのに、退職『人鉱』のお金はたかが数百元でも差し引くのか」など怒りを露わにするコメントも目立った。
「人鉱」とは今年初めから、ネット用語として若者の間で「自嘲的」に使われて流行した言葉で、命や財産、臓器などすべてが既得権益層によって搾取されてしまう庶民の例えだ。
大規模抗議の後、中国の受賞ジャーナリストである趙蘭健氏は8日深夜、「武漢市政府の医療保険改正策の施行延期」を緊急通知するSNSメッセージのスクリーンショットを投稿した。
ネット上には「またしても人民が勝利した!『白紙革命』も今回の医療保険改正も、勝利の味を知った中国人民による抗議は今後もっと増えるだろう」とするコメントが目立った。
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