国際情勢のリスク分析を行う米調査会社ユーラシア・グループは3日、2023年の世界の「10大リスク」をまとめた報告書を発表し、10位に「世界的な水不足問題」を挙げた。2023 年には、河川で最低水位を記録し、世界の企業の3分の 2が事業やサプライチェーンにおいて重大な水リスクに直面すると指摘した。
報告書では、1980 年代から急激に増加している水関連の紛争が、2023 年にはピークに達し、中東とアフリカが最も影響を受けると予測。水不足による、中東からの難民流出が北アフリカの経済見通しを脅かし、食糧価格を押し上げることによってアフリカの角の食糧不安は増大すると述べた。
米国では、2023 年に行われる取水制限で農家が収穫不良に直面すると分析した。米国の政策担当者は、発電、給水、食糧生産といった問題に追われるとしている。
いっぽう欧州においては、ノルウェーが水力発電の国内電力供給を優先するため、欧州向けの電力輸出を制限する可能性があると指摘。その結果、ノルウェーから送電網を通じて電力を輸入しているオランダやドイツが法的な対抗措置を取ると予測した。また、欧州の大動脈とされるライン川やポー川の水位が低下し、西ヨーロッパの経済活動全体に支障をきたすと述べた。
報告書はこうした世界的な水不足問題について、即効性のある解決策はないとした。気候変動や生物多様性に関する条約締約国会議(COP)や国連水会議のようなグローバルな取り組みも大きな進展は見込めないとしている。
以前から国際機関の報告書も水をめぐる問題のリスクを指摘している。戦争や平和の指標を作成するシンクタンク・経済平和研究所 (IEP)は中国やインドが今後数十年間で水不足の脅威に最もさらされる国として挙げた。
インドの国際安全保障研究者ブラーマ・チェラニー氏は、より人工的に作り出される水不足の脅威を明らかにしている。共産党体制が始まって間もなく、中国は水資源の豊富なチベットを併合した。
インド太平洋地域の10大河川水系の源流がチベットにあり、ダム建設も進めた。併合によって水をめぐる中国共産党の覇権は拡大し、中国人を含む10億人もの周辺地域の人々の水資源を管理下に置くことになった。チェラニー氏はこれを「水の武器化」と呼んでいる。
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