元米軍大佐、トマホーク購入は「日本の親中派没落の証」…日米協力で中共の計算狂わす

2022/11/03
更新: 2023/11/18

日米間で巡航ミサイルトマホーク」の購入交渉が行われていることについて、元米軍大佐は「日本上層部にいる親中派が没落した証」であると指摘した。トマホークを南西諸島に配備すれば中国共産党に対する抑止となり、その戦略的計算を狂わせることができると強調した。

元米海兵隊大佐のグラント・ニューシャム氏は、日本政府がトマホークの購入に向けた交渉を行っていることについて、「日本の自国防衛の意思の表れ」であると述べた。同氏は日本戦略研究フォーラムで上席研究員を務めている。

取材に応じたファネル氏(左)とニューシャム氏(右)(本人提供)

「トマホークのように中国の標的を攻撃可能な長距離ミサイルを装備することは、長らく日本ではタブーとされてきた」とニューシャム氏。自民党内の親中派や特定の省庁はトマホークの購入を快く思わないかもしれないが、「トマホークミサイルの購入は、日本上層部における親中派の勢力が没落した証」であると指摘した。

トマホークは米軍が運用する射程1000キロメートル超の巡航ミサイルで、数々の実戦で投入され、戦果を上げている。航空機や海軍艦艇のミサイル垂直発射装置、地上発射機などで運用することができ、精密な攻撃が可能となっている。

元米海軍大佐のジェームズ・ファネル氏は、日本は中国の脅威に直面しており、国家の安全保障を確保する抑止力として、中国本土を攻撃可能な兵器を装備する必要性を強調した。

「日本がトマホークミサイルを装備すれば、中国共産党の進出に対する抑止となる。今まで、北京にいる共産党指導部は反撃されることを考慮しなくてもよかった。しかし、日本がトマホークミサイルを南西諸島などの第一列島線に配備すれば、中国共産党の戦略的な計算を狂わせ、日本に対する攻撃的な姿勢を抑止することができるだろう」

ファネル氏は、対艦攻撃可能なトマホークミサイルを日本が取得する可能性にも言及した。「トマホークミサイルはもともと陸上の標的を攻撃するために設計されたものだが、海上の標的にも対応できるよう米国は改修した。日本は対艦攻撃可能な改修型ミサイルをも取得しようとしている可能性も全く否定できない」。

日本が対艦攻撃可能なトマホークミサイルを取得すれば、台湾防衛戦や日本への武力侵攻が発生した際の自衛隊の海戦能力は大きく向上するとファネル氏は考えている。

中国共産党の軍事的圧力に対抗するため、自民党は「国家安全保障戦略」など防衛3文書の改定で敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を目指している。防衛省は反撃能力の担い手として、自衛隊が運用する「12式地対艦誘導弾」の射程を約1000キロに延長し、巡航ミサイルとして運用する計画を打ち出しているが、運用開始は2026年となる見込み。

これに対しニューシャム氏は「確かに遅いかもしれないが、決して遅すぎることはない」と考える。ファネル氏も、トマホークミサイルを取得することにより、12式地対艦誘導弾の配備が始まる2026年までの埋め合わせにすることができ、中国の脅威から日本を防衛するのに大いに役立つだろうと述べた。

トマホークも「万能薬」ではない

ニューシャム氏は、日本がトマホーク巡航ミサイルを装備すれば中国共産党への抑止になるものの、決して万能薬ではないと指摘する。

「最適な兵器や防衛システムを購入することで安全保障上のリスクを低減できるとしばしば考えられているが、そのような考えは本来注視すべきリスクから目を背けることになりかねない。万能薬はない」

トマホークミサイルを正しく運用するためには、各種探知機器や情報ネットワーク、高度なインフラ、そしてノウハウが必要となる。日本経済新聞10月29日付によると、政府は台湾有事を念頭に、米軍との連携強化を図るべく、陸海空自衛隊の運用を一元的に担う「統合司令部」を新設する方針だ。

ニューシャム氏は「自衛隊と米軍が『統合』した努力を行い、リソースを共有する」ことを提唱した。そして「日米が協力して戦闘を行うことには大きな政治的意義がある」とし、日本の積極的な姿勢は双方のさらなる関係強化に資すると強調した。

グラント・F・ニューシャム

日本戦略研究フォーラム上席研究員。元米海兵隊大佐。カリフォルニア大学ロサンゼルス校法科大学院修了。米大平洋海兵隊予備役作戦参謀及び情報参謀、駐日米国大使館海兵隊武官、日米間の連絡官などを歴任。

ジェームズ・E・ファネル

ジュネーヴ安全保障政策センターフェロー。元米海軍大佐。ハワイ大学歴史学修士。第七艦隊情報参謀、海軍情報局上席中国情報官、スタンフォード大フーバー研究所国家安全保障フェローなどを歴任。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。