英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は6月30日、中国の一部の若者は就職希望先が情報機関のフロント企業であることを知らずに、中国政府のスパイ活動に加担させられる恐れがあると報じた。
同紙は中国海南省や四川省などの公立大学の卒業生140人に取材した。これらの卒業生は海南仙盾科技開発有限公司(Hainan Xiandun、以下は海南仙盾)の英語翻訳業務の求人募集に応募していた。各大学の求人サイト上に掲載された広告には、業務に関する具体的な説明はなかった。
米司法省は2021年7月19日、米国を含む各国に対してサイバー攻撃を繰り返し、各国の企業、政府機関と学術機関の機密情報を盗んだとして、中国国家安全省(MSS)傘下の海南省国家安全庁(HSSD)の工作員ら4人を起訴した。
起訴状は、海南仙盾は中国政府を背景に持つハッカー集団「APT40」のフロント企業であると示した。APT40は中国MSSの指示の下で、欧米や中東の政府機関などにハッキングを行っている。
海南仙盾の採用担当者は応募者の1人に対して、翻訳の実務ではなく、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)の理事会の役員構成や建物内部の構造、提携先との研究契約などについて探るよう指示した。APLは米国防総省や米航空宇宙局(NASA)と技術提携をしている。
また、同社は技術系資料の翻訳能力をテストするために、別の応募者に対して米連邦高速道路局(FHWA)のインフラ研究開発の資料を渡し、翻訳するよう求めた。資料にはインフラ施設の腐食防止技術に関する説明があった。
FTが海南仙盾の求人について問い合わせた後、海南大学のウェブサイトでは同求人広告が削除された。同大学外国語学部のサイトに掲載された募集要項は「英語ができる女子学生と共産党員」を歓迎するとした。
(翻訳編集・李凌)
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