中国政府が14日発表した新しい人事によると、外務省の楽玉成次官(58)がメディア規制当局、国家広播電影電視総局(以下は広電総局)の副局長に任命された。楽氏の異動は中露関係を巡る指導部の対立に関係しているとみられる。
楽氏は2018年から、筆頭次官として「日々の対外業務を担当していた」という。同氏は6人いる次官のうち、唯一中国指導部の重要会議に出席できる共産党第19期中央委員会の補欠委員である。
香港の親中メディア「星島日報」は5月26日、楽氏が広電総局の副局長に任命される予定だと報じた。
産経新聞の矢板明夫・台北支局長は11日、フェイスブック上で、楽氏は次期外相候補の1人とされていると指摘した。
10年前に外相に就任した王毅氏(68)は、すでに引退年齢に達した。
矢板氏は、楽氏の人事異動は左遷に相当するとの見方を示し、同氏が外交業務で何らかの過ちを犯したのではと推測した。
米国の中国語メディア「光伝媒」が12日に掲載した評論記事は、楽玉成氏は党内の習近平派かつ親露派であるとした。
記事は情報筋の話を引用し、指導部内部で中露関係を巡って対立を深めていると示した。反習近平派は、習氏の親露反米路線を批判し、欧米側からの経済制裁を回避するためにロシアと距離を置いたほうがよいと主張。これを受けて、共産党中央政治局は楽氏を広電総局に異動すると決めた。習近平氏はこれに反対した。
今年2月4日に行われたプーチン露大統領と習近平氏の首脳会談後、楽玉成氏は会談の成果について「中露の協力関係に上限はない」と報道陣に述べた。この発言を海外メディアは大きく取り上げ、中国はウクライナ侵攻を計画したロシアを支持しているとの見方が広まった。
楽氏は5月6日に開かれた世界20カ国主要シンクタンクとのオンライン会議で、米国が「ウクライナを犠牲にして欧州を支配し、同時にロシアの弱体化を図り、覇権と強権を続けようとしている」と強く批判した。
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