EU、アフリカで影響力を再確立、中国の「一帯一路」に対抗

2022/02/24
更新: 2022/02/24

欧州連合(EU)は中国共産党政権への対抗に勢いをつけている。今月中旬、EUはアフリカ投資計画を公表したほか、中国当局の通信技術の知財権保護措置が欧州企業の権利を侵害したとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。また、欧州議会は17日、EUに対して中国対抗の新戦略を制定するよう促した。

アフリカ投資計画

EUは17、18日の日程で、ブリュッセルでアフリカ連合(AU)との首脳会議を開いた。会議では、双方は「2030年に向けた共同ビジョン」と題した共同宣言を採択し発表した。

共同宣言によると、EU側は将来7年間、アフリカ投資計画に官民で1500億ユーロ以上を提供する。投資は主に、デジタル、エネルギー、輸送などのインフラ開発や、衛生、教育、気候変動対策、研究分野に振り分けられる。

宣言は、EUとAUは今後「新たなパートナーシップを強化する」と明記。新パートナーシップは「主権の尊重、相互尊重、説明責任、価値観の共有」などに基づくと強調した。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、EUの投資計画はアフリカにおける中国当局の資金支援の減少を補てんできるとの認識を示した。中共ウイルス(新型コロナ)の大流行で中国経済が悪化しているため、昨年末に開催された中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)では、中国のアフリカ諸国に対する資金提供は400億ドルまで減った。2018年のFOCACでは、中国側は600億ドルを提供していた。

中国当局の巨額融資によりアフリカ諸国などの債務危機が表面化している。特に、ザンビアは20年、アフリカで初の債務不履行(デフォルト)に陥った。同国政府の発表では対中債務は約60億ドル。対外債務全体の約4割を占める。英フィナンシャル・タイムズ(FT)1日付は、ザンビアのルング前政権が巨額融資を受け財政支出を大幅に増やした結果、債務危機に陥ったと指摘。ヒチレマ現政権は今、対外債務を再編し、国際通貨基金(IMF)から14億ドルの資金支援を受けようとしている。

中国対抗新戦略

欧州議会は17日、EUの「共通外交安全保障政策(CFSP)」と「共通安全保障防衛政策(CSDP)」の年度執行報告に関する決議案をそれぞれ可決した。

CFSPの年度執行報告は、威圧的介入を強める中国当局に対して、全ての加盟国が一致団結するために、より包括的で一貫した「EUー中国戦略」を制定する必要があるとEUに求めた。同戦略は、EUの価値観や利益の保護を基に、可能な協力、必要な競争、避けられない対立と言った3つの原則の下で、ルールに基づく多国間秩序の促進を目的とする。

また、年度執行報告は、中国共産党の脅迫に対抗するために、民主主義諸国間の協力拡大を求めた。同時に、中国当局による国内のウイグル人住民、キリスト教徒らに対する人権侵害、香港・マカオの民主主義と自由への破壊、南シナ海や東シナ海における航行の自由への侵害などを非難した。新疆ウイグル自治区や香港での人権侵害に加担した中国当局者や団体への制裁を求め、中国や香港との間で犯罪人引き渡し条約を結んでいるEU加盟国に対し、引き渡しをやめるよう呼びかけた。中共ウイルスの発生源をめぐる独立調査では、EUは他の同盟国と共に行うべきだとした。

また、CFSPの年度執行報告は、中国当局のリトアニアおよびその他のEU加盟国に対する脅迫行為を強く非難した。

CFSPとCSDPの年度執行報告はともに、中国当局による台湾への軍事的挑発を指摘した。

CFSPの報告は、中国側に対して、台湾海峡およびインド太平洋地域の平和と安定に深刻な脅威を与える威嚇を直ちに止め、現状を変える一方的な行動に反対すると示した。また、台湾海峡の現状を変える行動は台湾住民の意向に反してはならないと強調した。EUと各加盟国は台湾海峡の平和と安定のために、志を同じくするパートナー国と積極的に協力していくとした。

CSDPの報告は、中国当局の軍備と軍事行動の拡大への懸念が高まっていると示した。中国当局が特定の地域や国に対して好戦的なふるまいを強めていると批判。同報告は、EUは、インド太平洋地域などの地域紛争がEUの安全保障に及ぼしうる影響を評価すべきだと提案。

WTO提訴

EUは18日、中国当局が通信技術関連特許の保護を求める欧州企業を妨害しているとして、中国をWTOに提訴すると発表した。

EU側の発表によると、中国の裁判所は2020年8月以降「越境禁訴令」を出し、欧州企業が保有する特許を法的に保護するよう中国国外の裁判所に求めることを禁じた。それに従わない欧州企業に1日当たり13万ユーロの罰金を科し、中国国内にいる欧州企業の上級幹部を拘束すると圧力を加えた。被害を受けた欧州企業は、ノキア、エリクソン、シャープなどがある。

EUは、これらの行為は欧州企業の3G、4Gと5Gの通信技術をより低価格で中国企業に移転させるための中国当局の戦略の一部であると非難した。

欧州委員会のバルディス・ドンブロウスキス委員(通商・経済担当)は声明の中で、欧州のハイテク産業を保護し「われわれの核心的な技術開発におけるリーダーシップを確保しなければならない」と強調した。

EUは1月27日、中国当局がリトアニア製品を差別的に扱い、WTOのルールに違反したとしてWTOに提訴した。EU側は、リトアニアに台湾の出先機関を設置した後、中国当局はリトアニア製品の通関を拒否し、同国の製品を使わないよう他の欧州企業に圧力をかけたと批判した。

(翻訳編集・張哲)