ナイジェリアの大紀元記者、当局に拘束 米宗教自由委員会「憂慮すべき事態」

2021/11/09
更新: 2021/11/09

ナイジェリアのキリスト教徒に対する残虐行為を最前線で報道してきた英文大紀元(エポック・タイムズ)のルカ・ビンニヤット記者が11月4日、現地当局に拘束された。米政府系組織・国際宗教自由委員会(USCIRF)は「憂慮すべき事態だ」と抗議声明を発表した。

USCIRF委員トニー・パーキンス氏は「このジャーナリストの逮捕は、ナイジェリア政府の組織的な宗教的迫害への加担を示している」と大紀元取材に対して述べた。

11月6日午後、ビンニヤット氏を訪ねた友人でフリージャーナリストのルーベン・ブハリ氏によると、同氏に対する容疑は「傷害的な虚偽と扇動」になるとみられるという。今回の逮捕は、同氏執筆のエポック・タイムズ10月29日付掲載記事「In Nigeria, Police Decry Massacres as ‘Wicked’ but Make No Arrests(仮邦題:警察は虐殺を「悪どい」と断じたが、誰も逮捕せず=ナイジェリア)」に関連している可能性が高いという。

記事は、9月26日にカドゥナ州マダマイ村で非武装の男女や小さな子供たち38人が虐殺された惨事をめぐる、警察や政府の不対応を描いている。事件から1カ月を経ても、誰も逮捕されていないとの事実を報じた。

ビンニヤット氏は、8日に行われる法廷で刑事告発される可能性が高い。警察当局はエポック・タイムズの取材に応じていない。

「ナイジェリア当局は、村を次々と破壊するフラニ族の暴力的な過激派を、調査も起訴もせず放置している。罪のない市民が虐殺されている。この事態を報じる勇敢なジャーナリストを刑務所に入れてしまうのは、正義に対する暴挙だ」と、ハドソン研究所の宗教自由担当ディレクター、ニーナ・シェイ氏はエポック・タイムズの取材に述べた。

シア氏は、フラニ族の酋長の息子であるムハンマド・ブハリ大統領が、ビンニヤット氏の即時釈放を保証し、テロリストに対して公平な裁判を行うよう、米国は働きかけるべきだと述べた。

地元警察のモハマド・ジャリガ報道官はビンニヤット氏執筆の10月29日付の記事の中で、「先月のマダマイ村での痛ましい暴力事件について、これまでに逮捕者が出たという報告は受けていない」と語っていた。また、もし容疑者が逮捕されれば、州内で容疑者を見せしめにする行進をして、再発防止を図るとも述べていた。

ジャーナリスト保護委員会(CPJ)によれば、カドゥナ州では2017年以降「平和の侵害」などの容疑でジャーナリストが投獄されており、報道の状況が悪化している。また、CPJアフリカ担当者は、ジャーナリストの恣意的な拘束を「言語道断だ」と非難し、ビンニヤット氏の状況を注視していると述べた。

ビンニヤット氏は、残虐行為を報じる現地記者の一人として、フォックス・ニュースの戦争特派員であるララ・ローガン氏の目に留まった。

ローガン氏が手がけるナイジェリアの虐殺についてのFOX報道ドキュメンタリー番組「21st Century Terrorism Revealed(仮邦題:暴かれる21世紀のテロ)」は、9月27日に放送された。それによれば、2015年以降、4万3000人以上のキリスト教市民が、イスラム教過激派の傭兵や、イラク・シリア・イスラム国(ISIS)のナイジェリア支部に関わる反乱軍によって殺害されている。

この番組は、ビンニヤット氏を含む現地ジャーナリスト・チームの勇敢な報道姿勢を映し出した。この報道は、米国務省の元職員でエポック・タイムズ記者ダグラス・バートン氏が協力している。チームを率いるローレンス・ゾンゴ氏は、「殺されるかもしれないが怖くないのか」とのララ氏の質問に対して「殺されるのはわかっている。もう身を捧げている」と答えた。

シア氏は、こうしたジャーナリスト・チームの活動を称える。「命をかけてフラニ族のキリスト教徒の犠牲を伝えようとしている。民族・宗教間の大量虐殺の前兆と思われる現象を恐れずに報じる彼らの姿は、ジャーナリズムの最高賞にふさわしく、畏敬の念を抱かせる」と答えた。

ナイジェリアからの移民で、米セント・クラウド州立大学のディック・アンゼンゲ刑事司法学教授は、「ララ・ローガン氏の番組は、ビンニヤット氏や他のエポック・タイムズのジャーナリストの仕事に触れている。ナイジェリア当局の注意を引いた可能性がある」とみている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。