南シナ海における排他的経済水域紛争の解決を急ぐベトナムとインドネシア

2021/06/23
更新: 2021/06/23

中国が多くのインド太平洋諸国の排他的経済水域への侵入を繰り返す中、ベトナムインドネシアの間で数十年前から発生している領海紛争が解決に向かう兆しが見えてきた。

2021年4月に開催されたインドネシアのジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領とベトナムのファム・ミン・チン(Pham Minh Chinh)首相との会談を含め、近年両国間で多くの会談・協議が行われていることからも、両国が解決に向けて取り組んでいることが伺える。

シンガポールに所在する南洋理工大学(NTU)S・ラジャラトナム国際学大学院(RSIS)のファン・スアン・ズン(Phan Xuan Dung)研究員の説明によると、数十年前から、ベトナムとインドネシアがそれぞれ領有権を主張する海域が南シナ海のナトゥナ諸島周辺で重複していることで、両国政府間に摩擦が発生していた。

中国政府の攻撃的な活動に対する共通の懸念と係争海域におけるIUU漁業取り締まりで協力することへの共通の希望が、両国が紛争解決に目を向ける要因となった。

2021年4月30日にオーストラリアの東アジア・フォーラム(East Asia Forum)に掲載されたファン研究員著の記事には、「専門家等は長年にわたり、東南アジア諸国が域内の海域紛争を解決して協調的な取り組みを強化することで中国の海洋拡張主義に対抗することを提案していた」および「ベトナムとインドネシア両国の主張が重複する海域は中国の九段線内に存在するため、両国が海上境界協定を結ぶことで中国政府の違法な領有権主張に対抗する両国の姿勢を一層強力に示すことができる」と記されている。

南シナ海の領有権を主張するために中国政府が一方的に地図上に引いた「九段線」内にはさまざまな諸国の排他的経済水域が含まれる。2016年には、ハーグに所在する常設仲裁裁判所が中国の主張を違法とする判決を下している。

インドネシアのルトノ・マルスディ(Retno Marsudi)外相の声明では、ファム首相との会談後にウィドド大統領はインドネシアとベトナムの技術担当者等に排他的経済水域の画定に関する交渉を再開して結論を導くよう求めている。

ファン研究員の説明によると、領海画定に関して両国は2010年以降12回の会談を実施しており、直近では2019年のASEAN(東南アジア諸国連合)会議の際に両国が同交渉を推進することを確認し合っている。

ベトナムの国営報道機関が報じたところでは、協力体制を改善してIUU漁業対策の法的枠組を構築するため、ウィドド大統領とファム首相は極力早期に交渉をまとめる必要性があると強調している。

同研究員の説明では、2003年にベトナムとインドネシアは大陸棚境界画定協定では合意に至っているが、ナトゥナ諸島の北部海域(インドネシアが「北ナトゥナ海」という名称に変更)における両国間の排他的経済水域については依然として論争が続いている。

同研究員は、「同問題は法的観点が相反するために長期化していた」とし、「ベトナム側は大陸棚と排他的経済水域の両方に適用される単一の境界を求めているのに対し、インドネシア側は排他的経済水域と大陸棚に個別の法的概念を適用することを主張し、境界画定の方法として等距離の原則を採用することを望んでいる。両国が合意に至るには、双方の相互理解と調整が必要となる」と説明している。

国際司法裁判所に提訴することが紛争解決の一手段となり得る。

マルスディ(Retno Marsudi)外相の見解では、国家間の排他的経済水域境界に関する紛争は、国際法、特に1982年の国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)に基づき解決するべきである。

国連海洋法条約には排他的経済水域に関する沿岸国の権利、管轄、義務、並びに排他的経済水域の範囲が詳細に定められている。数々の声明や多国間協定を通して、インドネシアとベトナムは共に国連海洋法条約を尊重することを繰り返し表明している。

(Indo-Pacific Defence Forum)