中国、福建省で原子炉2基を新たに建設 米科学者らが懸念「プルトニウム量産で軍民両用か」 

2021/06/21
更新: 2021/06/21

中国福建省で原子炉2基の建設を進めている。電力燃料のためのプルトニウムを生産できるが、これで大量の核兵器を作り出すこともできる。中国共産党は、民間技術を積極的に軍事転用する党策「軍民融合」を掲げる。この国営企業により作られたプルトニウムの用途は明白にされていないため、科学者らは軍事利用の可能性は否定できないと懸念している。

歴史ある米大衆科学誌「ポピュラー・メカニクス」によると、国営企業の中国核工業集団は、台湾新北市から130キロほど北西に位置する福建省の長表島で、ナトリウム冷却プール型高速炉原型炉「CFR-600」2基を建設している。高速炉は、核反応によりプルトニウムを量産する「増殖炉」だ。

同誌によれば、世界各国のほとんどの原子炉は、プルトニウムの発生をできるだけ抑え、高価なウラン燃料を少なく使う軽水炉を採用している。使用済み燃料の再処理に経済的負担が増えるため、どの国も高速炉の建設は避けている。こうした状況にもかかわらず、費用対効果の低い中国がプルトニウムの「増殖炉」を建設することには、疑問符がつけられる。

国際原子力機関(IAEA)のデータによると、中国には稼働中の原子炉が50基、建設中の従来型原子炉が14基あり、最新の高速炉原型炉2基は数えられていない。中国側の発表によれば、現在建設中の2基は一つは2023年にグリッドに接続する予定であり、もう一つは2026年頃だという。

中国は2017年以降、IAEAに民生用プルトニウムの在庫に関する年次報告をやめており、どれほどのプルトニウムを保管しているのかを明らかにしていない。このため、IAEAは新たな原子炉により生産されるプルトニウムの使用目的も把握し難い状況だ。

米物理科学者「私は心配だ」「太平洋諸国は外交関与を」

米国が最近発表した報告は、さらに科学者らの懸念を増大させた。ワシントンにある核不拡散政策教育センター(NPEC)が3月に発表した報告書によると、「中国は現在、大規模な核兵器の増強に乗り出す方針」があると指摘している。さらに、現在建設中の原子炉で生成されるプルトニウムによって大量の核弾頭が短時間で製造できる可能性もあるという。

同報告書の執筆者であり、国際的に著名な核物理学者フランク・フォン・ヒッペル(Frank von Hippel)氏は、国際的な監視の目が届かない状態で、中国による軍民両用が行われる可能性があるとみている。「私は心配だ。デュアルユース(軍民両用)の目的があるのではないかと…」と書いている。

報告書によれば、この原子炉計画によって生産されるプルトニウムから、2030年までに1270の核兵器を作ることができる。高濃縮ウランを利用する場合、さらに2倍以上の核兵器の製造が可能になるという。

中国は現在、核弾頭を300~350発保有するとみられている。米国防総省も2020年9月、中国の核兵器増産を指摘しており、保有数を今後10年間で少なくとも倍増させるとの見通しを示した。

ヒッペル氏は、中国の透明性の欠如が、世界中の核不拡散を支持する専門家や政府の間で懸念を引き起こしていると書いている。

ヒッペル氏ら報告執筆は、この中国の原子炉建設計画に、インド太平洋地域の国々が外交的に関与すべきだと呼びかけている。「世界で最もダイナミックに繁栄する地域が、世界で最も危険な物質の生産(に関わる危険)に巻き込まれる可能性がある」「環太平洋地域の指導者たちは互いに外交的に関与すべき」と警告を発信した。

中国はなぜ大量のプルトニウムを生産しようとしているのか。「ポピュラー・メカニクス」誌は、世界の大国との競争力を高めるため、もしくは強力な交渉材料に使用するため、との見解を示している。

(蘇文悦、佐渡道世)