宮古海峡を通過した中国空母「遼寧」 米司令官が洋上からばっちり監視 

2021/04/17
更新: 2021/04/17

米海軍が4月4日にフィリピン海で撮影した写真に、ネット上で注目が集まった。写真には、海軍上級将校が洋上のミサイル駆逐艦の操舵室から足を投げ出し、中国海軍空母「遼寧」打撃群を肉眼で監視している様子がおさめられている。この数日後の9日、米海軍空母セオドア・ルーズベルトの空母打撃群が南シナ海で演習を行なった。中国軍に対する抑止を高めているとみられる。

米海軍によれば、遼寧を見ているのは、ロバート・J・ブリッグス(Robert J. Briggs)司令官とリチャード・D・スライ(Richard D. Slye)司令官。横須賀拠点の米国第7艦隊に所属する誘導ミサイル駆逐艦マスティン(DDG89)から撮影された。

防衛省の発表によると、この中国軍空母「遼寧」打撃群は4月3日、沖縄本島と宮古島の間の海域を通過している。5日、中国人民解放軍海軍広報官・高秀成氏は、空母遼寧が台湾島の近くで演習を行うと説明した。中国官製メディアによれば、1週間あまりの演習を行なった後、南シナ海へと南下した。

この中国軍の台湾周辺における演習と南シナ海の航行に関するニュース報道13日付のSNS投稿を受けて、米海軍情報部門チーフのチャーリ・ブラウン(Charlie Brown)少将は14日、冒頭の空母遼寧を監視する米将校の写真を添付し、中国軍に対する牽制を示した。

 

米海軍米空母セオドア・ルーズベルト打撃群と強襲揚陸艦マキン・アイランドは4月9日、南シナ海を航行し、演習を行なった(US Navy Photo)

中国軍が台湾周辺で演習を行う中、米海軍原子力空母セオドア・ルーズベルト打撃群と強襲揚陸艦マキン・アイランドもまた、南シナ海を航行し、演習を行なった。

米第9空母打撃群司令官ダグ・ベリシモ少将は9日発表の声明で「空母打撃群と強襲揚陸艦マキンアイランドの能力を組み合わせることで、私たちの戦術的なスキルが向上し、インド太平洋の安全と繁栄に対する継続的な献身を示すことができる」と述べた。

今回の米海軍の演習は、中国の海上民兵の船団がフィリピン沖のウィットサン礁付近に集結した状態が続いているなかで行われた。3月下旬、中国当局が「漁船」と説明する220隻の船団が、岩礁周辺に悪天候による退避を理由に同サンゴ礁にとどまった。現在、その数は40隻あまりに減ったが、引き続き停泊している。

9日、米国防総省ジョン・カービー報道官は南シナ海の係争地域に「中国の海上民兵が集結している。同盟国フィリピンの合法的な権利を阻害しようとする中国の取り組みに懸念を抱いている」と述べ、「米国は同盟国を支持する」とコメントした。

15日、在フィリピン米国大使館は、デルフィン・ロレンザーナ比国防長官とロイド・オースティン米国防長官は、米フィリピン同盟と「国連海洋法条約を含む国際法に根ざした、自由で開かれたインド太平洋」を確保する必要性について、共通のコミットメントを再確認したと発表した。フィリピンと米国は1951年に相互防衛条約を締結している。

(佐渡道世)