マルタ女性記者殺害、汚職事件の裏に「一帯一路」絡む投資計画=報道

2021/04/01
更新: 2021/04/01

2017年、マルタの著名な調査報道ジャーナリストであるダフネ・カルアナ・ガリツィア氏が車で自宅を出た直後、車に仕掛けられた爆弾で殺害され、事件は国際社会に大きな衝撃を与えた。ガリツィア氏は当時、政財界と外国資金の癒着を暴こうと取り組んでいる最中だった。同氏の遺志を継いだジャーナリストがその後、調査を続け、資金の流れの解明を目指した。そしてついに、マルタの大規模な汚職事件が中国当局が提唱する巨大経済圏構想、「一帯一路」に関係していることが明らかになった。

2016年、各国の首脳や富豪らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用して資産を隠していた実態を明らかにしたパナマ文書が公開された。ガリツィア氏は、マルタのムスカット首相(当時)とその妻が外国の資金を受け取っていると批判した。17年、ガリツィア氏は同国富豪ヨルゲン・フェネック氏が率いる企業と政府高官の結託を調査していた最中に暗殺された。

調査報道組織、組織犯罪と汚職報告プロジェクト(Organised Crime and Corruption Reporting Project、OCCRP)は3月29日、ロイター、タイムズ・オブ・マルタ紙、南ドイツ新聞紙と共同調査報告書を発表した。

同調査は、マルタのこの汚職事件は中国当局の「一帯一路」政策と関係しているほか、グローバル・コンサルティング会社、アクセンチュア(Accenture)中国法人の上級幹部、陳城(Chen Cheng)氏が関与している可能性が高いと示した。

ガリツィア氏は生前、マルタのコンラッド・ミッツィ前エネルギー相とキース・シェンブリ(Keith Schembri)首相補佐官は、それぞれ所有するオフショア企業を通じて、ドバイに登録された2つの企業から賄賂を受け取ったと指摘した。2社のうち1社が富豪のフェネック氏が率いる17ブラック(17 Black)社で、もう1社はマックブリッジ(Macbridge)社だ。 

OCCRPなどは、マックブリッジ社の取引関係ネットワークを掘り下げた結果、中国国有電力会社・上海電力のヨーロッパに対する4億ドル(約443億円)規模の投資を突き止めた。

マルタ政府関係者や公開情報によると、上海出身の陳城(43)氏は、過去10年間、上海電力の代表として、マルタとモンテネグロへの投資交渉を担当していた。

上海電力はマルタ政府の後押しを受けて、4億ドルを投じて、マルタ国営電力会社エネマルタ(Enemalta)社の株式を取得した。マルタと中国当局の高官は、この投資を「一帯一路」政策の一環だと認識した。

陳氏の家族は、香港で2社の企業を設立し、マルタと取引を行っている。そのうちの1社はマックブリッジ。 マックブリッジ社は、マルタ政府の交渉担当であったミッツィエネルギー相(当時)が所有するパナマの会社に200万ユーロ(約2億6008万円)を支払った。陳氏家族が経営する2つ目の会社、「ダウ・メディア・カンパニー(Dow’s Media Company、DMC)」社は、モンテネグロでの投資をめぐって、富豪フェネック氏の会社から100万ユーロ(約1億3004万円)を受け取った。

陳氏が働きかけた結果、エネマルタ社と上海電力は、モンテネグロでの風力発電プロジェクトに共同投資することになった。しかし、この風力発電プロジェクトの実質的な所有者はフェネック氏の会社である。一部の投資資金が17ブラック社に流れた後、17ブラック社は陳氏家族のDMC社に100万ユーロを支払ったという。

ロイター通信によると、陳氏と上海電力は同報道記事についてコメントしていない。アクセンチュア社は声明の中で、「当社の従業員の一人に関連するこれらの疑惑を慎重に検討している」とし、事業が展開している各国の倫理基準を順守すると示した。エネマルタ社は、陳氏についての質問に回答しなかった。

(翻訳編集・張哲)