中国当局、全人代組織法を改正へ 李首相の権限はさらに低下か

2021/03/10
更新: 2021/03/10

中国で現在開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、「全国人民代表大会組織法(改正草案)」を審議している。改正草案は全人代の閉会中、全人代常務委員会が各省の長官人事を決定できるとしたほか、副首相や国務委員を含む「国務院(内閣に相当)の他のメンバー」の任免権を持つことを認可する。改正案が可決されれば、李克強首相の権限が一段と縮小される見通しだ。

中国当局は1982年以来、約40年ぶりに「全人代組織法」を改正する。改正草案は、国務院のメンバーの任免権だけでなく、中国共産党中央軍事委員会の副主席や委員の任免権も、持つと定める。

中国の現行「国務院組織法」第2条では、首相が副首相などを指名し、全人代での承認を経てから、最終的に国家主席が副首相を任命する。

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)9日付によると、中国国内と香港の世論は、李克強首相の行政管理権がさらに低下するとの見方をしている。

中国憲政学者の王志強氏は、RFAに対し「中国共産党と政府機関はそれぞれの役割を果たしてきた。(今回の改正で)国務院が完全に党の指導の下に収められる」と話した。現体制では、中国共産党総書記は党務活動と政策決定を担当する。国務院は行政的管理をし、計画を立てて政策の実行を行う。

全人代組織法(改正草案)第3条は、全人代およびその常務委員会は、「中国共産党の領導を堅持する」「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、『三つの代表』という重要思想、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を手引きにする」とした。

王志強氏は、中国当局が今回の改正案を通して、政府人事に対する全人代常務委員会の任命権を拡大しようとしているという見方を否定した。「全人代は完全に中国最高指導者に服従している。首相の権限に関して、最高指導者ではなく、全人代が提起すれば、表向きとして体裁が良いからだ」と分析。

全人代は中国共産党の管理下にあるため、中国国民に「ゴム印」と揶揄されている。

一方、国務院副首相の中で序列1位の劉鶴氏は、習近平国家主席の側近中の側近で、習氏の経済ブレーンでもある。現在、劉氏は国内の金融セクターや、米国との通商問題も担当しており、国務院における実権は李克強首相に匹敵するとみられる。

昨年5月末、李首相は全人代の閉幕後の記者会見で、月収千元(約1万6000円)の中国人は6億人いると発言し、中国人口の約半分が貧困層であると示唆した。これによって、貧困人口をゼロにする「脱貧困」目標を掲げる習近平国家主席と李氏の対立は鮮明になった。

(翻訳編集・張哲)