中国で新型肺炎の感染が急速に拡大しているなか、湖北省武漢市に滞在する自国民を退避させる動きが広がっている。英国とドイツのメディアによると、中国当局は中国人配偶者の出国を認めない方針だ。また、中国当局が台湾政府に対して、武漢市にいる台湾人の退避を承認しないことが明らかになった。
英紙ガーディアン1月29日付によれば、英外務省は中国当局に対して、英国籍国民とその中国籍の配偶者、英中両国の国籍を持つ市民の退避について、協議を行ってきた。しかし、中国当局は、英国籍を持つ市民のみの退避を承認した。
英政府は30日にチャーター機を武漢市に派遣する予定。約200人の英国国民が帰国できる。
また、独誌「デア・シュピーゲル(Der Spiegel)」27日付によると、ドイツ政府は武漢市に軍用機を派遣すると計画していた。中国当局は軍用機の飛行が「市民に恐怖を与える」として難色を示したという。また中国籍配偶者の出国にも応じなかった。
時事通信29日付の報道では、菅義偉官房長官が記者会見で、在留邦人の中国籍の配偶者と家族への対応について、「中国側の方針も踏まえつつ調整を進める必要がある」と協議を行っていることを示した。
一方、台湾政府も台湾人を退避させるため、中国と交渉を行った。しかし、中国の台湾政策を所管する国務院台湾事務弁公室は台湾側の申し出を拒否した。武漢市には現在、約300人の台湾人が在留しているという。
1月28日、中国の国務院台湾事務弁公室の馬暁光・報道官は、台湾メディアの報道は「事実と違う」とした。馬報道官は、新型肺炎が発生して以来、「湖北省にいる台湾同胞は十分な配慮を受けている」「同省では1月27日午後まで、台湾同胞の感染確認は報告されていない。今後、武漢にいる台湾同胞に気を配っていく」などと述べ、中国からの退避を認めない姿勢を示した。
台湾の台中政策を所管する大陸委員会の邱垂正・報道官は29日、米ラジオ・フリー・アジアの取材に対して、「武漢市にいる台湾市民から、中国政府の主張と異なる状況を聞いている」「台湾市民は政府に対して、早期救出を求めている」と話した。報道官によると、現地に止まっている台湾市民の多くは旅行などの短期滞在が多い。「台湾市民は、薬品などが不足し、宿泊施設を転々としていると訴えた」という。
(翻訳編集・張哲)