国際 リオ五輪

米アスリート御用達 中国伝統医療「カッピング」が大人気

2016/08/15
更新: 2016/08/15

カッピング(吸玉療法、抜罐)とは、中国医学の伝統的な治療法の一つで、米国のオリンピック選手の間で積極的に取り入れられていることから、今最も熱い視線が注がれている自然療法だ。米国の著名なアスリート、水泳のマイケル・フェルプス選手の身体に残るカッピング跡は、彼の獲得した金メダル同様、世界中から注目を集めている。

「フライングフィッシュ」の異名を取る同選手が、記念すべき19枚目の金メダルを獲得した時、各国メディアはメダルと共に彼の身体に残るカッピング跡について大々的な報道を行った。

以前、フェルプス選手はマスコミの取材に応じた際に、身体の調整のため、中国の伝統療法「抜罐」を好んで用いていると明かしている。今回のオリンピックで同選手の身体のカッピング跡がテレビに映し出され、大手メディアの多くもこぞってカッピングを取り上げたため、この中国伝統医療が一躍脚光を浴びることになった。

英日刊紙デイリーメールは、米国人アスリートの肩や背中に小さな丸い跡が残されているのをよく目にするが、これは彼らが「抜罐」という特殊な療法を受けていることを表していると報じている。

同じく米体操選手のアレックス・ナダー選手も、今回のオリンピックでは、カッピング跡を残したまま華麗なる技を披露した。

同選手はカッピングの治療効果を強く実感しているようだ。「この1年間、私が健康を維持することができた秘密が、このカッピングだ。これまで私がお金をかけて試してきたどんな方法よりも効果がある。カッピングは私が受けてきた中で一番の治療法だ」

カッピング療法​ 中医学「抜罐」とは

                         カッピング療法

カッピング療法は中国で古くから行われ続けてきた。昔は動物の角を使ってカッピングを行っていたため、「角法」とも呼ばれている。

中国におけるもっとも古い治療記録は、湖南省長沙にある紀元前2世紀の墳墓、馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から出土した、現存する最古の中国医学文献『五十二病方』(『五十二病方(馬王堆出土文献訳注叢書)』小曽戸洋、町泉寿朗、長谷部英一著、東方書店)の中に残されており、ここにはウシ科動物の角を使って治療すると記されている。

その後、唐代以降になると、カッピング療法の適用範囲が内臓疾患にまで拡大された。

中国医学においては、人の身体には経絡という気血の通り道が存在し、それが体中の臓腑と体表を結んで体全体を網目のように網羅していると認識されている。

中国医学の鍼灸治療とは、ツボを刺激することによって経絡や臓腑の機能を調整し、身体の陰陽と気血のバランスを取り、治療するというもので、人体のパーツを個別のものとして認識し、部分的に治療する西洋医学とは異なり、身体全体を一つのシステムとしてとらえている。

カッピングの治療も原理は同じで、ツボの部位や部分的に気血の詰まりのある箇所をカッピングで吸引することによって、経絡や気血の流れをよくし、身体のエネルギーの流れを整え、本来身体に備わっている自然治癒力を高めることで、治療や強壮といった効果を上げている。

カッピングした部分の皮膚の変化を観察することで、疾病の性質と重症度が判断できる。例えば、ある患者がカッピング治療を受けるたび、吸引部分の皮膚がだんだんと黒ずんでくるようであれば、病が徐々に悪化していることを表している。反対に皮膚の色が明るく変化していれば、病状が好転していることを表している。

ただ、「抜罐」は筋肉の緊張・疲労・痛みを緩和することに即効性があるが、体質の弱い人は避けるべきだと専門家が注意している。

(翻訳編集・島津彰浩)