周永康氏一族の金庫番、失踪1カ月 取り調べ中か

2013/09/09
更新: 2013/09/09

「富豪で実業家の呉兵氏が当局の取り調べを受けている」。中国財新メディア傘下のニュースサイト・財新網と大手経済紙・経済観察報はこのほど、匿名の政権関係者の話として一斉にこう報じた。呉氏は、前指導部の主要メンバー、中央政法委の前トップ周永康氏一族の「金庫番」と言われている人物。これにより、周氏への調査の包囲網が狭まれているとの見方がいっそう強まった。

呉氏は四川省出身の50歳で香港の永住権を所有。周氏の息子・周斌氏の盟友として知られている。

財新網は複数の有力情報筋の話として、呉氏は8月1日に北京西駅で当局に連行されてから、すでに1カ月以上、消息を絶っていると報じた。

香港当局から入手した資料によると、香港の永住権を得た呉氏は3回ほど名前を変え、2004年から香港で投資会社2社を相次ぎ設立した。

中国有力紙・南方都市報は、「これらの会社は経営活動を行っておらず、呉氏は全額出資する唯一の役員である」などと伝え、同氏は謎深い人物であることを明らかにした。

中国国内でも、呉氏はエネルギーや不動産関連の会社を複数設立している。

そのうちの1社、「中旭盛世風華投資有限公司」の法人代表・王志強氏は3日、「経済観察報」の取材に対して、呉氏と連絡が取れなくなっていると認め、自身について「名義貸しの法人代表に過ぎず、「会社を実質的に管理しているのは呉兵氏だ」との発言を繰り返した。

同社の株主になっているある従業員は、「呉兵氏が調査に協力している」と同紙の記者に話し、「会社の登記簿には株主と登録されているが、呉氏に名義貸しを頼まれただけ」と経営に関わっていないことを強調したという。

英BBC放送(中国語版)は4日、海外華字ニュースサイトの情報として、「呉氏は周氏一族の不正蓄財の資金洗浄に協力した疑いがある」と報じた。

周永康氏の側近が相次ぎ失脚して捜査を受けているこの時期に、キーマンの一人とみられる呉氏の消息を取り上げた財新網。編集長の胡舒立氏は、幹部の腐敗を取り締まる中央紀律検査委員会のトップ王岐山氏との関係が近いとされ、「その報道から政治の方向性は読み取れる」との見方は少なくない。

米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)などの海外中国語メディアは、「決して偶然なことではなく、周氏を裁く時期がいよいよ迫ってきた」とみている。

一方、外交部の報道官はロイター通信の取材に対して、周氏の問題について「業務範囲ではない」とコメントを避けた。

ロイター通信は、「薄煕来のスキャンダルや、噂されている周氏への取り調べは、共産党執政以来の最大の権力闘争だ」と評した。

共産党内では「現職あるいは引退した政治局常務委員を処分しない」という暗黙のルールが存在している。習近平政権がこのルールを破ることができるかは今後も注目される。

(翻訳編集・叶子)