チベット、祝いなき新年  国営メディア「華やかな祝賀」と報道

2012/02/23
更新: 2012/02/23

【大紀元日本2月23日】2月22日はチベット民族にとって一年で最も重要な日「ルーサー」(新年)だ。しかし中国国内の同地区では、華やかな踊りも装飾も見られない。チベット亡命政府ロブサン・センゲ首相が先月、中国当局による弾圧とチベット僧の焼身自殺を受けて、祝賀行事の停止を求めたからだ。それにも拘らず、中国国営メディアはチベットで新年の行事が盛大に祝われたかのように報じており、弾圧の事実や焼身自殺には全く言及していない。

チベット亡命政府広報部によると、中国旧正月の1月24日、チベット自治区内で基本的人権保護を訴えて集まったチベット人に警察が無差別に発砲、6人が死亡し60人が負傷した。

新年の22日も、多数の中国武装警察と人民軍が自治区内に配備され、厳しい監視体制が敷かれている。

センゲ首相は政府公式サイトで、ルーサーの祝賀を行わないよう呼びかけ、代わりに「中国政府の抑圧的な政策の下で苦しんだすべての人々のために、寺院に赴き、宗教的慣例の通りに香をたいてほしい」と政府公式サイトに声明を出した。

ここ2週間で10代のチベット人3人が焼身自殺しており、これまでこの方法で自害したチベット人は24人に上る。

しかし、これまで中国国営メディアは一度もチベット自治区での焼身自殺について報じておらず、代わりにルーサーの華やかな祝賀が行われるかように報じており、現地の深刻な現状は、無視されている。

中国日報は21日、「5000人以上がポタラ広場で伝統的な歌と舞踊の練習を行った。金色の美しい衣装をまとった踊り子たちが、農村や住宅地で踊りを披露する」と報じた。中国TVも同日『チベット新年行事の準備が進む』と題する記事で、あるチベット人老父が自宅で家族と装飾やご馳走の準備をしているという話を伝えたが、掲載された写真はチベット伝統の装飾ではなく、中国旧正月の飾りを写したものだった。

新華社は「大学教育を受けたホワイトカラーの仕事を持つ若いチベット人男性が、一家団欒で、酒や団子などチベット伝統料理を楽しんだ」という話を伝えている。

首相が語るチベットの現状

センゲ首相は21日、チベット自治区の現状を政府公式サイトの動画で次のように伝えている。「チベット侵略以来、中国政府は『社会主義のパラダイスを創造する』と主張してきた。しかし、チベット人に基本的人権はなく、環境は破壊され、言語と文化は同化され、ダライ・ラマ尊師の肖像画を掲げることは禁じられ、チベット人の経済は底辺に置かれている。チベットは仮想監禁状態にある。外国人が立ち入ることは妨げられ、全地域が基本的には宣言されていない戒厳令の下にある」

センゲ首相は、世界中のチベット人らに対して「罪のないチベット人への暴力と殺害は受け入れがたい、という明確なメッセージを中国政府に送るため」、8日に徹夜で祈りを捧げるよう呼びかけていた。新年の22日も、亡命政府のこの運動に共鳴して数人の香港在住の活動家がキャンドルナイトを催すようネットで呼びかけ、数百人が参加の意思を示した。

「自身の『家族』を殺すことは、国際法および中国憲法に明確に違反することを中国政府の代表は認識すべきであり、このような行いは、国際社会的な立場における中国の道徳観と行為の正当性に対して、更なる疑問を投げかけるだろう」とセンゲ首相は訴えている。

(翻訳編集・佐渡 道世)