中国西部の青海省共産党当局は最近、チベットの寺院で子ども向けチベット語の補習クラスを開いてはいけないとの命令を通知した。国際人権団体は「子どもたちへの指導はチベット民族の基本的権利」として、禁止を直ちに解除するよう要求している。
中国では現在、学校は冬休みを迎えている。冬休み中は、寺院で子どもたちにチベット言語や仏教哲学の授業、講話が行われる。教師役はラマ僧が務める。近年、政府系の学校ではチベット語を教えなくなったため、寺院のこういった取り組みは住民に歓迎されている。
国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、2018年12月に中国共産党の青海省囊謙(ナンチェン)県委員会統一戦線部は、「寺院での危険な勉強会に関する通知」をチベット語で発布した。それによると、当局は寺院での授業について「若者への危険で有害なイデオロギーの浸透」と形容し、授業運営は即刻停止としている。
HRWは1月30日、これに抗議する声明を発表。「禁止令は、チベットの文化や生活などあらゆる基本的権利を侵害している」とソフィー・リチャードソンHRW中国代表は批判した。
「チベットの子どもたちから僧侶や寺院との接触を奪うことは、中国(共産党当局)による地域と文化の抑圧強化を意味する」とリチャードソン氏は指摘した。
HRWによると、今回の禁止令は青海省で発布されたが、以前チベット自治区でも同様の通知があったことが確認されているという。
チベット自治区チャムドで2018年5月14日、公立小学校に通う子どもの保護者宛てに出した通達には、「子どもが寺院の授業や宗教行事のために学校を欠席したと判明した場合、直ちに現地の教育部に通報する」とある。
当局による禁止の理由は「子どもたちのクリティカル・シンキング(批判的思考)が養われる」としている。
同年8月23日、中心都市ラサの中学校は、「保護者との合意文書」として、保護者に「生徒の宗教活動への参加をやめさせる」よう要求している。その理由は、学外の自由時間においても「生徒の学習、健康、精神安定のために適切な指導が必要」だという。
こうした要求に異論を唱えたことで、チベット民族の男性が拘束された例もある。同年5月、小売店経営者タシ・ワンチェックさんは海外のジャーナリストに対して、チベットの言語と文化教育が失われていると話したため「分離主義の扇動」で逮捕され、5年の禁固刑が下った。
(編集・佐渡道世)
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