日本や米国、EUなど16の国と地域は10月31日、G20伊サミットに合わせて、グローバルなサプライチェーン(供給網)の強靭化に関する会議を開いた。このなかで、「国際的な規則や規範に違反する有害な慣行は、供給網から排除」することを促すことで一致した。人権問題に取り組む国際議員連盟はこの成果を歓迎するとの声明を発表し、中国国内の強制労働に早急に取り組む必要性を強調した。
会議は米国が議長を務め、ホワイトハウスが会議に関する声明を発表した。会議参加国は、供給網の強靭化への4つの柱として透明性、オープン性、安全性、持続可能性をあげ、多様性と自由競争による供給網の発展を掲げた。このほか、単一の供給源による深刻な経済的脆弱性を回避し、非効率な納品計画、知的財産の損失、違法製品の流通などが引き起こされないようセキュリティを高めることなどについて意見を合わせた。
さらに、国際労働条約に基づく労働条件に合致させるよう、各国政府や産業界に求めた。「国際的なルールに違反する有害な行為は、私たちのサプライチェーンから排除されるべき」と明記し、国連のビジネスと人権に関する指導原則に沿った商業慣行の実施を促すとした。
この供給網強靭会議に参加したのは米国、EU、英国、オーストラリア、カナダ、コンゴ民主共和国、ドイツ、インドネシア、インド、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、韓国、シンガポール、そしてスペインだった。
こうしたサプライチェーン強靭化に向けた国際的な動きを歓迎する声が上がっている。中国共産党の人権侵害について警鐘を鳴らし、諸外国に対処を呼びかけてきた国際議員連盟「対中政策に関する列国議員連盟(IPAC)」は1日、供給網強靭化に関する取組みを歓迎する声明を発表した。
IPACは、綿花や太陽光パネルなど世界的に需要の高い製品を挙げ、これらの製造過程で新疆ウイグル自治区における強制労働や虐待があると指摘、早急な対処の必要性を強調した。
中国の綿花生産は8割以上が新疆産とされる。また、英大学調査によれば、太陽光パネル向けポリシリコンの生産シェアは、新疆が世界全体の約45%を占めている。
強制労働等の疑いがある産品が供給網に入ることについて、IPACは「世界的なサプライチェーンを汚染している」と批判。また、中国政府は「貿易に対する依存を脆弱性として悪用しており、従わない者に懲罰的な経済措置をとると脅している」と非難した。
IPACは、各国政府は国際労働機関(ILO)が定めた人権規定を順守し、国際的なサプライチェーンにおける人権保護を行うよう呼びかけた。また、中国国内で事業を展開している企業は、供給網から人権侵害を取り除く努力をする責任があると主張した。
日本政府は、国連のビジネスと人権の行動原則を踏まえ、2020年10月に「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)を策定した。経済産業省と外務省は今年10月中旬までに、上場企業を対象として「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」を実施。この調査結果はまだ発表されていないが、状況把握のうえで人権デュー・ディリジェンスの導入を促すとしている。
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