「中国の騒乱 危険な一年」 エコノミスト誌、中国にフォーカス

2012/02/07
更新: 2012/02/07

【大紀元日本2月7日】世界の政治・経済ニュースをリードする英エコノミスト誌はこのほど、中国コラムを設けた。特定の国にフォーカスするコラムを設けるのは伝統あるエコノミスト誌としても初めてのことだ。そして、その最初の記事は「中国の騒乱:危険な一年」と題する。

ソーシャルメディアの急増 隠し切れない抗争

記事によれば、中国の5.13億人のネットユーザーのうち、約半分は中国版ツイッター「微博」ユーザー。昨年1年間でユーザー数は前の年の約5倍に躍進している。また、30歳以下の都市部ユーザーの9割は微博を日常的に利用しているという。

微博の普及は中国の情報伝達の様子を変えた。3、4年前では伏せられた地方の民衆抗争や幹部のスキャンダルは、今では瞬く間に微博を通じ国中に知れ渡る。政府は必死に抗争事件の発生を阻止し、メディアにも沈黙を命じているが、微博の力はすでにこれらの規制を腑抜けにしている。

微博はさらに、中国人の共産党政権への信用をなくしている。北京にある世論調査会社・ホライズンによると、2010年、北京市民の共産党政権への信用度と生活への満足度が「大幅に下落」し、2011年にもこの傾向が続いた。特に政権への満足度が10%下がり、60%に低迷したことは言論統制の厳しい中国の調査としては異例のことだ。

また、中国を取り巻く内外の経済環境が悪化し、「中国モデル」の存続も危うい。エコノミスト誌の記事は、経済の先行きの不透明さとソーシャルメディアの普及で、中国の民衆抗争を頻繁にしていると指摘。共産党の指導者らにとっては、権力交代に直面する今年は非常に敏感な時期であり、いかなる騒ぎも彼らを不安にしているという。

このような状況は1988年を彷彿とさせる、と記事は続けた。当時、中国のインフレが深刻化し、共産党内では保守派と改革派の間では激しい派閥闘争が繰り広げられた。その翌年に起きた天安門事件で共産党内の衝突をいっそう浮き彫りにした。

エコノミスト誌は中国人学者の見解として、中国ではジャスミン革命が起きないにしても、今後数年間、各地で各種の民衆抗争が頻発すると見ている。経済成長の鈍化と貧富格差の激化はこの状況の触媒になるという。

内憂外患の「爆弾ゲーム」

中国の減速は、2008年の世界金融危機後に推し進めた経済刺激対策に原因があると記事は指摘。これらの対策はインフレと不良債権をもたらし、今度は中国政府が、インフラ投資を減らすなどの支出削減策に迫られている。

内憂に加えて外患。欧州危機や米国経済の低迷が中国の輸出を直撃し、多くの工場は閉鎖に追い込まれている。

インフレや工場の経営難はまた、低所得の労働者を苦しめている。輸出産業が集中する沿海地区から内陸にまで工場労働者のストライキが頻繁に起きている。中国社会科学院の報告によると、2011年に起きたストライキは2010年よりも組織性と対抗性が高く、連鎖的な発生も多い。香港の非政府組織(NGO)中国労工通訊は、中国の労働者は自らが払った多大な犠牲に気づき、多くの人は沈黙の姿勢を捨てたと指摘している。

ストライキに参加する労働者の多くは農村部からの「農民工二世」であることも社会科学院の報告で明らかになっている。2010年の統計では、中国の大都市で働く労働者のうち、60%は出稼ぎ労働者であり、その多くは農民工二世だという。彼らには農業経験がなく、都市部での就業チャンスが減った今でも農村部に戻れない。さらに彼らは一世より教育レベルが高く、生活への期待も高いため、発展鈍化の犠牲になることに苛立ちと怒りを覚えている。

「農民工二世が希望を失い、農村に戻ることにも抵抗があるならば、中国はどういう問題に直面するかを容易に想像できる」と記事は問題提起した。

中国政府は輸出に頼らぬ産業構造への転換を速めたい一方で、今までの輸出産業を支えて来た農民工の就業問題も考慮しなければならない。難しい舵取りが求められている。

多くの危機を抱える中国政府について、エコノミスト誌は最後に、カウントダウンが聞こえる「爆弾ゲーム」を遊んでいるようだと綴った。

(翻訳編集・張凛音)