【大紀元日本6月30日】ロシア海軍は2013年までに、フランスから初めて購入するミストラル級ヘリコプター空母(強襲揚陸艦)2隻を、同国極東地域の太平洋艦隊に配備する計画を立てている。この動きについて専門家は、ロシアは軍事力の重心を西側ヨーロッパ地域から極東地域に移したことを意味し、その狙いは中国をけん制することだ、と指摘する。米VOAが28日に伝えた。
ロシアは今年1月、フランスからミストラル級ヘリ空母4隻を購入する政府間合意文書に調印した。ロシア国内紙「ブズグリャド」によると、4隻の総費用は約24億ユーロに上り、ロシア史上最高額の武器輸入契約になる。そのうち2隻は、空母完成予定の2013年、太平洋艦隊に配備されるという。
VOAはロシアメディアの分析として、ヘリ空母を太平洋艦隊に配備することは、ロシア政府がアジア太平洋地域の戦略的重要性を重視する姿勢を示していると伝えた。また、この地域の経済や産業、人口などに与える中国の影響への警戒感が、空母配備の決め手となった、と指摘した。
ロシアに忍び寄る「中国引力圏」
VOAによると、昨年1年間、ロシア極東地域への中国の投資額は、ロシア政府の投資額をはるかに上回っている。近年、極東地域とシベリア地域の経済分野などに中国が積極的に進出を果たし、その影響力は中国の経済力の増強と共に拡大している。ロシアメディアは、この2つの地域は「中国引力圏」に入った、と指摘する。
ロシアのメドベージェフ大統領は最近、英フィナンシャル・タイムズの取材に対し、中国の経済発展が及ぼすロシアへの影響に言及した。大統領は、中国との国境に位置するアムール州を視察し、対岸の中国黒竜江省の発展を目の当たりにした時、「ロシアもそうしないと、立場が弱くなると感じた」と、胸の内を明かした。中国の発展と振興はロシアにとって「挑戦」であるとの認識を示した。
ロシア科学アカデミー極東研究所の中国問題専門家ラーリン氏はVOAに対して、中国の経済規模の拡大はロシアの国境地帯を直撃していると指摘。極東地域の市場には、中国からの食品や家電、洋服、靴などが溢れている。ロシア政府は、中国の投資で極東の発展を求める一方、中国の勢力拡大により極東地域がロシアから分離するのではないか、との懸念を抱いている。「極東地域はロシア政府の財政援助を受けており、いまは経済危機に陥っている。プーチン首相は数年前にも、この地域はロシアの経済空間から逸脱する恐れがある、と語ったことがある」とラーリン氏は述べた。
一方、中国政府は巨額の出資でロシア国境地帯のインフラ事業を進めている。ロシアと隣接する黒竜江省の僻遠の農村部は、いまや賑やかな都市へと変身を遂げている。
ロシアの軍事外交政策の中心はアジアに移転
忍び寄る中国の影に、ロシアは警戒している。その一方で、ロシアの西側ヨーロッパ地域と極東地域との間に拡大しつつある差も、同国政府を悩ませている。ロシア政治軍事分析研究所フラムチヒン副所長は、「西側ヨーロッパ地域にとって、極東地域の状況を正確に把握することは難しい。ロシア人のほとんどは西側ヨーロッパ地域に住んでいるため、これらの不利な要素は、ロシア政府の警戒感を強めた」と指摘する。ヘリ空母の太平洋艦隊への配備もこれらの事情を背景に、ロシア政府が中国の勢力拡大の阻止に乗り出したと分析する。
フラムチヒン氏は同時に、ヘリ空母の太平洋艦隊への配備は、領土問題が再燃しつつある日本への警告にもなると述べた。同氏によれば、これまでのロシアの太平洋艦隊の仮想敵は日本であり、陸軍の仮想敵は中国だったという。
極東研究所のキスタノフ氏は、ロシアの軍事力の配備は東に移動していることに加え、指導部は昨年以来、極東地域を数回にわたって視察していたことから、ロシア外交と軍事政策はアジアに重心を移しているとの見解を示した。「アジア太平洋地域は、世界の政治経済の中心になりつつある。ロシアはヨーロッパ圏とアジア圏をまたぐ国であるが、これまでアジアをそれほど重視していなかった。ロシア政府の姿勢の転換は、自然の流れである」と述べた。
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