甘粛省土石流災害の原因:過度な開発と都市計画の誤り=中国国土計画専門家

2010/08/16
更新: 2010/08/16

【大紀元日本8月16日】8月7日22時ごろ、中国甘粛省甘南チベット族自治州舟曲県で豪雨が降り出し、翌日の午前零時過ぎに県庁所在地北部の羅家峪、三眼峪から市街地に向かって土石流が形成された。洪水と土石流は、市街地面積の半分を押し流した。残った家屋や建物の低階層は土砂に埋もれ、傾き、深刻な被害を受けた。死者、行方不明者は2千人を超すとも伝えられている。

今回の災害が発生した原因として、降雨や当該地区の地理的条件以外に、主なものとして、白龍江流域の過度の開発と、舟曲県都市建設計画の誤りが挙げられる。

過度の開発

舟曲県はかつて山紫水明で名高く、「甘粛の小江南」と称されていた。50年代初めまで、同県は森林に覆われ、河水は澄み、景色は美しく、空気は新鮮で、生態環境もバランスがとれていた。しかし、その後50年以上続く開墾、森林伐採、鉱床開発により、同県の主要な川である白龍江の流域は、中国でも地質災害が多発し、経済発展の立ち遅れた地区として有名になってしまった。

蘭州大学の崔瑞萍さんは、修士論文「白龍江中流における地滑り・土石流の防治体系およびその効果と利益の研究」の中で、「ここ50年来、人類の生産活動が活発となり、乱伐、急斜面での耕作、不合理な採掘、爆破、水利工事、各種開発建設などにより、山は破壊され生態のバランスを失い、山崩れ、地滑り、土石流がますます頻発し、これらがつくり出す危害や直接的な経済損失も日に日に拡大しつつある」と述べている。

(編集者注:中国メディア2005年の報道でも、1952年、舟曲県に林業局が設立されてから1990年までに、189.75畝(1265アール)の森林が伐採されたとの指摘がある。それは、全県の森林面積が毎年10万立方メートルの速さで減少したことを意味し、生態環境の破壊は限度を超えているという。)

特記すべき点は、白龍江流域の階段式開発と人工的な水路化が、今回発生した災害の主要原因となっていることである。舟曲県の人口は13万人に満たない。しかし、白龍江の階段式開発に伴って、県内の水力発電開発プロジェクトは40余りに達する。すでに建設された巴藏水力発電所など15か所の水力発電所のほかに、虎家崖など14か所でも水力発電所が建設中である。経済発展の立ち遅れた地区ほど、大規模な開発を通じて状況を変化させたいと考えた結果である。

地方政府の指導者が開発を通じて個人の功績を誇示しようとすることから、往々にして個人の目の前にある利益を重視し、民衆の長期的利益を軽視する。水力発電所を建設して水嵩が増えれば、河川の両側の山の斜面では山崩れや土石流が引き起こされやすくなる。建設により掘り起こした土砂を谷間に埋めれば、流れやすい材料で地滑りや土石流が起こりやすくしているようなものである。

また、同県の地質構造にはもともと不安定な要素が存在し、地質活動により断裂構造が作られている。県内の地形は起伏が激しく、ヒビや断裂が生じ、軟岩が広く分布しており砕け易い。同県水利局関係者は、現地の地質や山体の構造はもともと緩く、これが地滑りや土石流など地質災害の原因となっていると指摘している。

誤った都市計画

舟曲県の街は白龍江の両岸の細長い地帯に建設されている。白龍江を全て人工的な水路にし、自然の川をコンクリートによって狭い断面の中に圧縮し、河流の両側には大型高層建築物を密集して建築した。このような都市計画は、完全に平原地区の河川沿いの大都市の形式を模倣したもので、できるだけ土地の価値を高めようとしている。白龍江が山岳地帯の河川であり、舟曲県が狭隘な山岳地帯の渓谷に位置していることを完全に無視したものである。

山岳地帯の河流は洪水による水位変動幅が大きく、大量の石や巨石が流されてくることも多い。人工化された狭い川筋は水の排出を満足に行えず、巨石は狭い川筋にたやすく自然のダムを形成し、堰止(せきとめ)湖を形成してしまう。加えて両岸の大型建築物に阻まれ、堰止湖の水位は高くなり、大災害を引き起こしやすくなる。

白龍江の渓谷は狭いため、居住地区は本来、分散して配置すべきだが、舟曲県の都市部の建設は、白龍江沿いと、南から北へ延びていくという2本の軸からなっている。このような都市建設は、北部地区山地の斜面の安定を破壊した。今回の土石流はまさに北部の羅家峪、三眼峪で形成され、都市計画の2本の軸に沿い、北から南へ、そして白龍江へ流れこんだ。

県の都市部の病院が最も低い窪地に建設されたことも、都市計画の失敗のひとつである。洪水により市街地の多くの建物は2階まで水没したが、これらの病院は3階まで水没してしまった。その結果、病院は救援過程における作用を発揮できず、却って救援されるべき地点となってしまった。また、3階まで水没したことにより医薬品はすべてダメになった。災害発生後に発信された最初の情報は、舟曲県の医薬品不足であった。

江源地区は中国で最も環境破壊の深刻な地区

災害の発生した舟曲県は、中国の江源地区に属する。白龍江は四川省最大河川の嘉陵江の支流で、嘉陵江は中国最大の長江の支流である。江源地区は中国の給水塔であり、生態環境破壊の深刻な地区でもある。舟曲県の土石流災害は、江源地区の過度の開発と都市計画上の誤りが原因だが、それは、同地区の生態環境破壊の必然的結果であると言えるだろう。今回の災害が人々への警鐘となることを願いたい。江源地区の生態環境保護は、我々、そして子孫に大きく関わることなのだ。

(翻訳編集・坂本)