政府は10月16日、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による犯罪を未然に防ぐため、トクリュウが使用するスマートフォンなどの通信端末に遠隔からアクセスし、内部の情報を取得できるようにする警察官職務執行法改正案を閣議決定した。
裁判官の許可状を得ることなどを条件に、重大犯罪の計画や標的に関する情報を把握し、被害の防止につなげる。今国会で成立すれば、公布から半年以内に施行される見通しだ。。
改正案は、犯罪の証拠を集めて立証する従来の捜査とは異なり、被害が発生する前に危険を察知し、犯罪を防ぐための行政上の権限に位置づける。対象となる犯罪や端末、情報の取得方法を限定するとともに、裁判所の事前審査や公安委員会への報告など、権限の乱用を防ぐ仕組みを設ける。
解析を担うのは、警察庁長官が「被害防止電子計算機調査官」として指名した警察官に限る。許可状の範囲を超えて取得した情報は消去し、実施の状況を公安委員会に報告する。
端末の利用者には、解析後に対象となった犯罪や裁判所の許可状を出した日、解析を実施した日などを通知する。通知や情報管理の具体的な方法については、今後、国家公安委員会規則で定める。
特殊詐欺の被害拡大 対策急ぐ
制度導入の背景には、トクリュウが関与する特殊詐欺や強盗などの被害が深刻化していることがある。警察庁が発表している統計によると、2025年の特殊詐欺被害額は3257億円に上り、統計のある中で過去最高となった。2026年も被害の増加傾向が続き、8月末までの累計は約2361億円と、前年同期を約588億円上回った。
トクリュウは、SNSなどで集めた実行役と指示役が互いの素性を知らないまま、秘匿性の高い通信アプリなどを通じて連絡を取り合うのが特徴だ。実行役を逮捕しても、指示役や次の標的は特定できず、犯行が繰り返されることが課題となっている。
警察はこれまで、通信事業者から記録の提供を受ける方法や、通信内容を傍受する手法などを用いてきた。しかし、強固な暗号化機能を備えたアプリでは、端末上の通信内容を把握することが難しく、犯行計画を事前につかむうえで障壁となっていた。
遠隔解析によって端末内の情報を取得できれば、指示役や犯行の標的、実行計画などを把握し、被害が生じる前の対応につなげられると政府は期待する。
警察庁は8月、遠隔解析の導入に向けた有識者会議を設置。技術面の課題や通信の秘密などの人権保障、海外の制度をめぐって検討を進めた。先月24日には、重大犯罪の発生が差し迫り、ほかに有効な情報収集手段がない場合などに限って実施することを柱とする提言をまとめ、法整備を求めていた。
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