仏各地で学生ら抗議デモ 教育問題を掲げるも政治色強く 「反ファシズム」「パレスチナ解放」など唱和

2026/10/07
更新: 2026/10/07

フランス全土に広がってい​る学生らによる抗議運動。パリ中心部のレピュブリック広場では10月6日、最新のデモ行進を前に、参加者らが「国家も警察もファシストも倒せ」などと気勢を上げた。

広場では「みんな警察が嫌いだ」「武器を取れ」などのシュプレヒコールが響いた。このほか、「パレスチナを解放せよ」「われわれは皆ガザの子供たちだ」「マリーヌを刑務所へ」「メランションを大統領に」などの声も上がった。「マリーヌ」は極右政党・国民連合(RN)の有力政治家マリーヌ・ルペン氏、「メランション」は急進左派「不服従のフランス(LFI)」の創設者ジャンリュック・メランション氏を指す。

参加者らはまた、イタリアの反ファシズム運動で知られる「われわれは皆反ファシストだ」を意味する「シアーモ・トゥッティ・アンティファシスティ(Siamo tutti antifascisti)」を繰り返し唱えた。

デモには高校生や大学生だけでなく、極左活動家、労働組合員、年配の参加者も加わった。北アフリカやサハラ以南アフリカにルーツを持つ若者や、イスラム教徒の女性が着用するスカーフ姿の女性も多く見られた。

メランション氏は「不服従のフランス」のマヌエル・ボンパール全国調整役(幹事長格)とともに行進の先頭近くを歩いた。社会党のオリビエ・フォール党首もデモに参加した。

行進開始前には、パリ北郊サン=ドニ市長で「不服従のフランス」所属のバリー・バガヨコ氏が若者らから「バリーを大統領に」と歓迎を受けた。バガヨコ氏は参加者に「不服従のフランス」への投票を呼びかけた。

2026年10月6日、フランス・パリのナシオン広場で、パリ北郊サン=ドニ市長で「不服従のフランス」所属のバリー・バガヨコ氏が、写真撮影のポーズを取る高校生のデモ参加者たちに囲まれている(大紀元)

バガヨコ氏をめぐっては、先月29日に警察の対応に対する暴力について「正当化され得る」と発言し、同時に暴力は避けるべきだとも述べたことで、物議を醸していた。パリ警視庁のパトリス・フォール警視総監はその後、犯罪行為を扇動した可能性があるとして、発言を検察当局に付託した。

教育めぐる不満に潜む政治的主張

抗議運動に参加した一部の高校生にとって、教育をめぐる不満は特定の政治的主張と結び付いていた。

17歳の高校生ムサさんは、フランスにおける「構造的な人種差別」や、高等教育への進学を目指す黒人の高校生に対する「人種による選別」を告発するため参加したと語った。

同じく17歳のモハメドさんは、イスラム教徒に対する「フランスの構造的なイスラム嫌悪」に抗議していると説明。イスラム教徒が宗教上の信条に従って服装を選ぶことを禁じられていると主張した。

18歳の学生アーサーさんは「教育にもっと資金を、イスラエルには少なく」と訴えた。20歳の法学部生レイラさんは、フランスは「軍事より教育に多くの予算を投入すべきだ」と主張。「イスラエルへの圧力を維持し、パレスチナ人を支援するため」にもデモに参加したと語った。

デモ隊が最終目的地のナシオン広場に到着するころには、警察との衝突が激化した。参加者らは警察に向けて石やガラス瓶、迫撃砲型の花火などを投げ、警察への抗議や暴言、やじを繰り返した。警察は催涙ガスを使用した。

2026年10月6日、パリのレピュブリック広場から行われた高校生のデモ行進の終盤、ナシオン広場一帯に催涙ガスが漂っている(大紀元)

全国で488人逮捕 高校約900校で休校措置

パリでのデモは、6日にフランス国内約30都市で行われた抗議活動の一つ。今回で全国におよぶ抗議運動は3日目となる。この運動は先月半ば、教員不足や校舎の老朽化、長時間の授業などへの不満を背景に始まった。

フランス内務省によると、全国で488人が逮捕され、警察官43人が負傷した。教育省によると、全国約3700校の高校のうち約900校で休校措置が取られた。

抗議運動は首都だけにとどまらず、ストラスブール、レンヌ、トゥールーズ、中部フランスのシャトールーでも警察との衝突が発生した。仏紙フィガロによると、警察官が攻撃を受けたという。

内務省によれば、先月28日以降の逮捕者は6547人に上る。首相府は、警察官少なくとも715人、学生215人が負傷したとしている。

2026年10月6日、パリで行われた高校生の抗議活動中、ナシオン広場で、ヘルメットと防護装備を身に着けた機動隊員が盾を構えて隊列を組んでいる(大紀元)

テロ称賛とみられる動画も

抗議運動をめぐっては、学生らの間で物議を醸すスローガンも広がっている。

パリ南方のオルレアンでは、近郊ボージャンシーのフランソワ・ビヨン高校で1日に行われた封鎖中、学生らがラップ曲を歌う動画が拡散。フィガロ紙によると、検察当局はテロ行為を称賛した疑いで予備捜査を開始したという。

ラップの歌詞には、2012年にフランス南西部で兵士3人と、ユダヤ人学校に通う子供3人を含む計4人を殺害したイスラム過激派テロリスト、モハメド・メラの名前が登場する。

また、2015年にパリで起きた劇場「バタクラン」襲撃事件や、その事件への関与で有罪判決を受けたサラ・アブデスラム、ナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーにも言及しているという。

また5日には、フランスの政党「国民連合」のマチュー・バレ議員が、パリ近郊ミトリー・モリーのオノレ・ド・バルザック高校で、学生が警察官の集団を指さすような仕草をしながら、激高した群衆に向かって「10人しかいない。アッラーの名において、殺そう」と叫んだとして、検察当局に通報したと明らかにした。

「高校生の抗議」の実態めぐり論争

抗議運動を支援する政治勢力の存在も論争となっている。

首相府は1日、フランスの情報機関が高校の封鎖について「『不服従のフランス』と極左勢力が組織した策略」とみていると発表。6日に国民議会で演説したセバスチャン・ルコルニュ首相も、「不服従のフランス」が混乱を引き起こそうとしており、暴力を政治活動の一部に組み込んでいると批判した。

首相の発言に対し「不服従のフランス」は反発。「不服従のフランス」のボンパール全国調整役は政府が「陰謀論に陥っている」と非難した。

封鎖に反対する右派系学生団体UNIの全国代表バティスト・ジリ氏は、エポックタイムズに対し、抗議運動を単純に「高校生の抗議」と呼ぶことは「誤解を招く」と指摘した。

「これは名ばかりの『高校生の抗議』だ。高校生や大学生の大多数は勉強に集中している」とジリ氏は述べ、「参加者の要求の一部には正当で理解できるものもある」としながらも、「極左による暴動や暴力の口実として利用されている」と主張した。

その上で、「UNIは、教員不足など困難な状況に直面しながらも、封鎖や破壊行為に訴えることのない圧倒的多数の若者の代弁者となることを目指している」と述べた。さらに、封鎖や破壊、公共秩序の混乱の現場には「極左のプロ活動家」が存在すると指摘した。

ジリ氏は混乱の責任の一端はマクロン政権にもあると指摘。「政府は、左派系学生組合が本当に学生を代表しているかのように扱って会談に応じる一方、UNIとの会談を拒んだ」と述べた。

その上で、「暴力に訴えれば要求を実現できるという極左の考え方を政府自身が正当化してしまう」と批判した。

2026年10月6日、パリのレピュブリック広場で行われた高校生の抗議活動中、ある抗議参加者が、フランスのエドゥアール・ジェフレ教育相を描いた『WANTED: DEAD OR ALIVE(指名手配:生死を問わず)』と書かれたポスターを掲げている(大紀元)

米トランプ大統領も反応

フランスの混乱は国外にも波及した。

米トランプ大統領は6日、フランスで起きている事態について「制御不能な大量移民にほかならない」との見方を示した。

トランプ氏はSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、今回の混乱は本質的に学校問題ではなく、かつて偉大だったフランスをイスラムが乗っ取ろうとしていることが問題だと主張した。

「フランスで起きていることは、制御不能な大量移民にほかならない。これは学校の問題ではなく、イスラムがかつて偉大だった国を乗っ取ろうとしていることだ」と投稿した。

2026年10月6日、パリのレピュブリック広場で行われた高校生の抗議活動中、抗議参加者たちが共和国記念碑(Monument to the Republic)の上に集まり、パレスチナ国旗を掲げている(大紀元)

一方、フランスの抗議運動に関係する団体とイスラム主義組織とのつながりをめぐっても疑問が浮上している。

左派系団体の一つで、抗議活動を呼びかけている「高校生労働組合(USL)」について、仏誌ル・ポワンは、昨年に「フランスのムスリム学生(EMF)」と共同で団体を設立したと報じた。フランス政府が昨年5月に公表した報告書は、EMFをムスリム同胞団のフランス支部における学生部門と位置付けている。

UNIのジリ氏は、現場でEMFの活動家を確認しており、「革命的左派と連携し」、イスラム教徒の学生に対して「フランス社会で自分たちは大きな抑圧を受けているという物語を利用して」支持を広げようとしていると主張した。

エティエンヌ・フォシェール(Etienne Fauchaire)はパリを拠点とするエポックタイムズのジャーナリストであり、フランス政治および米仏関係を専門としている。