ドイツの検察当局は7日、ナチス政権下で迫害されたユダヤ人の子孫を装い、ドイツ国籍を不正に取得した疑いで32人を捜査していることを明らかにした。このうち少なくとも28人が中国籍だという。
デュッセルドルフ検察は同日、エルサレム・ポストに対し、容疑者らが偽造書類や虚偽の経歴を使ってユダヤ人迫害被害者の子孫を装い、ケルンにある連邦行政庁にドイツ国籍を申請したと説明した。多くがドイツのパスポートを取得していたという。
検察によると、ドイツ連邦刑事庁(BKA)と検察当局は約1年前から捜査を続けている。容疑者らは文書偽造や国籍法違反の疑いを持たれている。
ユダヤ人被害者の子孫を装う 血縁関係を捏造
ドイツ基本法第116条第2項は、1933年から1945年のナチス政権下で、政治的、人種的、宗教的理由によりドイツ国籍を剥奪された人とその子孫について、国籍回復を認めている。
申請では、出生証明書や血縁関係を示す書類などが求められる。一方、ドイツへの居住や一定の語学力、収入などは原則として要件とされず、従来の国籍を放棄する必要もない。
ドイツ誌シュピーゲルは4日、犯罪グループがナチス迫害の被害者だった実在のユダヤ人夫婦に目をつけ、架空の「子や孫」を作り上げ、その身元を顧客の入籍申請に利用していたと報じた。
同誌によると、誘拐や殺人への関与が疑われ国際手配されている中国籍の劉姓の人物は2024年、故カール・ジークフリート氏とゲルトラウト・ズースキント氏の孫を装い、「デリック・ワン」という別名でドイツ国籍とパスポートを取得したという。
ロンドン在住の中国籍の田姓の人物も、同じ夫婦の子孫を名乗り、ドイツ国籍を取得していた。
32件を確認 約半数がすでに国籍取得
報道によると、これまでにドイツ各州で32件の類似事例が確認され、このうち約半数の申請者がすでにドイツ国籍を取得していた。
容疑者の多くは中国で指名手配されている逃亡者で、一部は巨額詐欺事件への関与が疑われているという。
不正な国籍取得を仲介するグループは、中国語のSNSを通じて顧客を募集し、ドイツのパスポートを取得すれば各国への渡航が容易になり、国際手配も逃れやすくなるなどとうたっていたという。
容疑者はいずれもドイツ国外に居住し、キプロス、イスラエル、英国、米国などに滞在しているため、ドイツ当局が出頭を求めるのは難しい状況だ。
中国籍以外にも、イスラエル人2人が捜査対象となっている。このうち精神科医の1人は2017年、ジークフリート夫妻の「娘」としてドイツ国籍を取得していたが、申請書類に記載した入国時期が実際の記録と一致していなかったという。
取材記者に脅迫メッセージ
シュピーゲルの記者によると、最近、取材を続ければ報復すると警告するWhatsAppのメッセージが、英国の電話番号から送られてきたという。
同誌はまた、不正取得を理由とするドイツ国籍の取り消しは10年以内に限られており、期間を過ぎると国籍を取り消すことが難しくなると指摘した。
報道は、ナチス時代の迫害という歴史的背景から、ドイツ当局が申請者を信頼する姿勢で審査してきたことが、詐欺グループに悪用されたと指摘した。今回の事件は、国籍審査の仕組みにある弱点も浮き彫りにしている。
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