中国 住民の配信制限、動画削除、現場封鎖…現地取材で見えた「情報統制」の実態

「被災地を映すな」「真相を話すな」 中国・広西洪水から1か月

2026/08/06
更新: 2026/08/06

洪水から、まもなく1か月。

本来なら復旧が進み、生活再建が始まっていてもおかしくない時期だ。しかし、中国・広西チワン族自治区横州市では今も多くの住民が家を失ったまま避難生活を続け、補償金も支払われていない。

その一方で、本紙姉妹メディア・新唐人テレビ(NTD)の現地取材では、被災地の実態を外部へ伝える動きに対し、当局がさまざまな形で圧力を強めている実情が明らかになった。

8月3日、被災地には警察や行政職員が訪れ、「ライブ配信は事前に届け出が必要」と住民に通告した。住民側は事実上の配信制限だと受け止めている。

現場で配信していた女性は、「私たちは被災地の今を映しているだけ。政府の悪口を言っているわけではない。それなのに、なぜ配信してはいけないのか」と憤った。

行政側は炊き出し用の仮設厨房についても撤去を求めた。支援も十分とは言えない。別の女性は「洪水から約1か月、政府から受け取ったのは水とカップ麺、それに米5キロだけでした」と涙ながらに話した。政府は補償金の支給を約束したものの、いまだ支払われておらず、多くの被災者はいまも生活再建の見通しが立たないという。

さらに住民の怒りを招いたのが、救援テントの撤去だった。

家を失った世帯のため設置していた青い救援テントを8月2日の深夜、一斉に撤去した。住民によると、翌朝には現場にフェンスが設置され、警察が撮影を制止していたという。行き場を失った人たちは、自費で部屋を借りるしかない状況に追い込まれている。

情報統制は、住民だけに向けられているではない。被災状況をSNSで発信した民間救助隊に対し、地元当局が電話で動画の削除を求めていたことも分かった。救助隊員は「私は事実を伝えただけなのに、権力を振りかざして脅された。結局、自分で動画を削除した」と悔しさをにじませた。

横州市公安は8月4日、「洪水に関するデマを流した」として18人を摘発したと発表した。このうち複数のネット利用者は、「スーパーで数十人から100人位が死亡した」と投稿したとして、行政拘留処分を受けた。

一方、決壊したダム周辺では鉄板の壁を設置し、警察らは周辺を警戒。ドローンで撮影した被災地の映像も、その後まもなく削除された。

現地では「村ごと流された」「公式発表より犠牲者ははるかに多い」との声が相次ぐ一方、公式発表では死者26人、行方不明者7人としており、被害の全容はいまも明らかになっていない。

今回の広西洪水で見られた「被災地を映すな」「真相を話すな」という対応は、決して初めてではない。

中国では大規模な災害や事故、無差別殺傷事件などが起きるたび、現場の封鎖や動画削除、ライブ配信の制限、情報発信者の処分を繰り返してきた。広西で起きている光景もまた、多くの中国人にとって見慣れたものとなっている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!