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中国 反詐欺を名目に過剰な顧客監視 SNSで話題も検閲で即削除

中国の大手銀行で約20万円を引き出そうとした客が「犯罪疑い」で警察に通報される?

2025/11/09
更新: 2025/11/09

「そのお金、どこから来たのか? どこに使うのか? 振り込んだ人を同席させ関係を証明して」

日本で暮らす私たちにはとても理解しがたいことだが、近年、中国各地の銀行で起きている。

ネット上には「銀行から預金を引き出そうとしたら、銀行から各種の難癖をつけられる」と怒りの声にあふれている。

銀行側は「詐欺を防止するためだ」と言っている。

そうした中、預金を引き出そうとしたら、銀行窓口で「詐欺防止」を理由に警察へ通報されるという信じがたい事件が実際に起きた。

中国の四大国有銀行の支店で、客が現金1万元(約20万円)を引き出そうとしたところ、銀行側から「用途を答えろ」と執拗に尋問され、抗議した結果、「警察に通報する」と脅されたのである。

発端は、元『南方週末』記者で『南方都市報』の首席編集者を務めた経歴を持ち、現在は広東広強法律事務所の弁護士として活動する周筱贇(しゅう・しょういん)氏の投稿だった。

周氏は山東省東営市の建設銀行支店で、友人の結婚式に持参する祝儀のため現金を引き出そうとした。 
                        
しかし、窓口の職員は神経質なほど慎重で、金額を伝えるとすぐに「何に使うのですか」と質問を浴びせてきた。

周氏が「消費だ」とだけ答えると、職員は納得しない様子で「具体的に何を買うのですか」とさらに詰め寄った。

 

中国建設銀行のオフィスビル、上海(Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

 

唐突な詮索に、周氏の表情はこわばった。「これは私の金だ。何を買おうと銀行に報告する義務はない」と語気を強めた。

それでも職員は引き下がらず、今度は過去の取引まで持ち出した。「先月、ある人物からあなたの口座に送金がありましたが、これは何の資金ですか」と問い詰めたのだ。

あまりのしつこさに、周氏は堪忍袋の緒が切れた。「あなたは公安(警察)なのか? 私を捜査しているのか? あなたたちに報告する義務はない」と声を荒らげた。

職員は悪びれる様子もなく、淡々と言い放った。

「すでに反詐欺センターと派出所(交番)には電話しましたが、どちらも出ません。こうなったら、反詐欺センターの担当者に来てもらって、直接確認してもらうしかないですね」

呆れ返った周氏は、深く息をつきながら言った。
「それなら受けて立とうじゃないか」と応じ、銀行内で約30分待ったが警察は現れなかった。やがて最初の行員の上司が現れ、「通報はしていない。お金を下ろしますか」と淡々と告げた。

だが、ここまでのやり取りにうんざりしていた周氏は「もういい!」と言い放ち、銀行から「帰ってもいい」と告げられて支店を後にした。

周氏は後にこの一部始終をSNSに投稿し、こう綴った。

「結局、こうした『規定』は絶対ではなく、担当者や上司の気分次第でどうとでも変えられることは知っていたが、まさか自分がこんな理不尽な扱いを受けるとは思わなかった。建設銀行は市民を最初から犯罪者扱いし、自分の金を使うにも潔白を証明しなければならない社会になっている」

投稿は11月5日、中国SNSのウェイボー(微博)で急速に拡散し、検索ランキング7位まで浮上したが、まもなく(人為的に順位が抑えられたと考えられ)トレンドから姿を消した。その後、関連ワードも検索不能となった。

建設銀行側は中国メディア「大河報」の取材に対し、「東営市のすべての銀行で同じ取り扱いをしている。反詐欺センターの指示に従っている」と説明。一方、東営市の反詐欺センターは「金額の基準は決まっていないが、銀行には調査義務がある」とし、双方が責任を押し付け合っている。

この「反詐欺センター」は、名目上は電話詐欺や金融詐欺を防ぐために公安(警察)機関の下に設けられた監視部門で、銀行と連携して顧客の資金の流れをチェックしている。

しかし、通常の個人取引まで対象とされるケースが増えており、「過剰な監視だ」と市民の不満が高まっている。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!