2月6日、米上院の民主党議員団は、ドナルド・トランプ大統領によるカシュ・パテル氏の米連邦捜査局(FBI)長官指名を本会議に進めるための上院司法委員会の採決を遅らせた。
パテル氏は元検察官で、第一次トランプ政権時に国防長官代行の首席補佐官を務め、国家安全保障問題に関する保守系論客として注目を集めた。トランプ大統領は1月20日の就任初日に、1月19日にトランプ氏の要請で辞任したクリストファー・レイ前FBI長官の後任としてパテル氏を指名した。レイ氏は2017年にトランプ氏によって10年任期で任命されていた。
パテル氏の過去の発言は民主党から批判を受けており、パテル氏がFBIをトランプ氏の政敵に対する報復に利用する可能性があると指摘されている。
これに対しパテル氏は、そのような意図はないと繰り返し述べている。1月30日の指名に関する最初の承認公聴会で、パテル氏は「FBIの政治化はない。私がFBI長官に承認された場合、FBIによる報復行為は一切行わない」と発言した。
2月4日、上院司法委員会の民主党議員10名全員が、委員長のチャック・グラスリー上院議長代行(アイオワ州・共和党)宛てに書簡を送り、パテル氏の指名審議の延期を要請した。委員会は2月6日に指名を本会議に進めるための採決を予定していた。
書簡の署名者らは「パテル氏は、大陪審での証言や自己負罪拒否権(アメリカ合衆国憲法修正第5条)を主張するに至った状況に関して、委員会メンバーからの質問に全く答えようとしなかった」と述べた。
1月30日、パテル氏は委員会の指名承認公聴会に出席し、5時間以上にわたって上院議員からの質問に答えた。
司法委員会の規則1条3項により、委員会メンバーは指名採決の1回限りの1週間延期を要請できる。この行動は共和党上院議員から民主党の不誠実な行為だと批判された。
委員会メンバーのマイク・リー上院議員(ユタ州・共和党)はソーシャルメディアプラットフォームのXで「共和党は前回の議会で17回もこの規則を放棄した。(民主党も)ここでそうすべきだ」と述べた。
2月6日のパテル氏の指名採決が予定されていた公聴会で、グラスリー氏は「民主党議員は二重基準(double standard)を設けている」と発言した。「共和党は非常に物議を醸す候補者が議題にあがった時でさえ、この配慮を行った」と述べた。
これに対し、委員会の民主党筆頭委員であるディック・ダービン上院少数党院内幹事(イリノイ州)は「これは異例の指名だ」と反論した。
また、2021年1月6日の米国議会議事堂侵入事件に関連して収監された受刑者による音楽パフォーマンス「J6プリズン・クワイア(囚人の合唱団)」の宣伝にパテル氏が関与したことも批判した。
ダービン氏を筆頭とする民主党の署名者らは書簡で、パテル氏が「指名承認公聴会で宣誓の下、明らかな虚偽の証言をした」と主張し、候補者は説明を行う必要があると述べた。
また、トランプ政権によるFBIのキャリア官僚の最近の解雇や、2023年にトランプ氏を機密文書の不適切な取り扱いで起訴するために召集された大陪審でのパテル氏の発言(トランプ氏の当選後に棄却された)について、パテル氏に委員会で説明するよう要求した。
この延期により、パテル氏の指名に関する採決は少なくとも2月13日まで遅れる可能性がある。
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