2025年3月23日、中国の王毅外相が東京都内で日中友好議員連盟の会長を務める自民党の森山裕幹事長や、日本国際貿易促進協会の会長である河野洋平元衆議院議長らと面会した。この会合は、王毅氏が日中韓外相会談などの外交日程の一環として訪日中に実施したものであり、特に注目されている。NHKなど日本の大手メディア各社が報じた。
背景には、米中関係の緊張が続く中で、中国共産党(中共)政権が日本との関係強化を図ることでアメリカとの連携を揺さぶろうとする戦略的意図があると考えられる。
面会の概要と王毅発言
王毅外相は今回の面会を「最も重要なイベント」と位置付け、参加者に対して日中関係の発展への貢献に感謝を述べた。中国外務省によれば、この場で王毅外相は、「世界が弱者をいじめるジャングルに戻ることは許さない」と述べ、アメリカ主導の経済政策への警戒感を示した。
また、台湾問題や歴史認識への言及を行い、日本側に対してこれらの問題について慎重な対応を求め、中国側の立場を強調した。さらに、次世代交流の重要性を唱え、若い世代が積極的に友好活動に参加し、中日関係を持続的に発展させる必要性を訴えた。
中国側の狙いは日米分断工作か
今回の王毅外相による訪日は、単なる友好促進だけではなく、戦略的な意図が含まれている可能性がある。特に、トランプ政権時代から続く米中間の緊張関係が背景にあると考えられる。
1. 日米同盟への揺さぶり
日本とアメリカはインド太平洋地域で緊密な同盟関係を築いており、中国に対抗する主要な軸となっている。中国は日本との関係改善を通じて、この同盟関係に亀裂を生じさせようとしている可能性がある。特に台湾問題や歴史認識について日本側に再考を促す発言は、アメリカ寄りの姿勢から距離を取らせる意図があるとみられる。
2. 経済的依存先の多様化
トランプ政権以降、中国は経済的なデカップリング(分断)の圧力に直面している。これに対抗するため、日本との経済的パートナーシップを強化し、中国経済への依存先を多様化する狙いがある。特に日本企業との協力や投資拡大は、中国経済安定化のため重要な要素だ。
3. 外交的孤立の回避
アメリカがインド太平洋地域で同盟国との結束を強める一方、中国は孤立化するリスクに直面している。日本との関係改善は、中国が孤立から脱却し、地域内で一定の影響力を維持するための重要な手段となっている。
日本側の対応と課題
今回の面会には、自民党幹事長である森山裕氏や河野洋平元議長、海江田万里前衆院副議長など、日本側からも複数名が出席した。彼らは日中間で対話と交流を継続する重要性について認識を共有したものの、安全保障や経済政策などで中国との協力には慎重な姿勢も見受けられる。
現状、日本政府はアメリカとの同盟関係強化に注力しており、防衛力増強やインド太平洋戦略へのコミットメントも進んでいる。そのため、中国が日本とアメリカ間に亀裂を生じさせることは容易ではない。ただし、日本としても中国とは経済的な結びつきが深く、完全な対立路線には慎重だ。
今後の日中関係と展望
今回の王毅外相による訪日は、日中関係改善への意欲が示された一方で、両国間には未解決の課題が多く残されていることも浮き彫りになった。例えば、中国による日本産の海産物輸入禁止措置や東シナ海での領土問題などについて具体的な進展は見られない。
また、中国側が日本との関係強化を通じてアメリカへの牽制を図ろうとしている点について、日本政府や民間セクターがどこまで応じるかも注目される。今後の日中関係は、両国間で実務的な協力体制がどれだけ構築されるか、そしてそれが地域全体へどんな影響を与えるかによって左右されるだろう。
日米韓の鉄の三角関係
一方、今回の日中韓外相会談に先立ち、2025年2月15日にアメリカ、日本、韓国の外相はミュンヘンで会談し、3か国の揺るぎないパートナーシップを再確認している。共同声明では台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を強調し、それが国際社会の安全と繁栄にとって不可欠な要素であると認識している。
日米韓は平和的な方法で両岸(中国と台湾)問題の解決を促進し、現状を一方的に強制または脅迫によって変更する試みには反対すると述べている。
また、台湾が国際機関に参加することを支持すると表明しており、この会談で韓国もその取り組みに加わったことを意味している。この日米韓の鉄の三角関係は、中国共産党に対する戦略的圧力となっている。
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