人工衛星など宇宙ベースの監視における覇権と、軍事にも利用が可能な能力を守る能力は、将来、米中が衝突する際の重要な決定要因となるだろう。現在、中共政権はこの重要な覇権争いに勝利する軌道に乗っているように見える。
同政権は宇宙の軍事化に反対していると主張する一方で、アメリカの衛星を破壊したり無力化したりできる能力を開発しつつある。2021年半ば、PLA(中国共産党軍)北部戦区の技術者へのインタビューにより、PLAは3つの対宇宙ミサイル、DN-1、DN-2、DN-3を保有しており、対衛星兵器(ASAT)を搭載して低軌道、中軌道、高軌道に到達できることが明らかになった。
この種の実験や報告は、他の最近の行動と相まって、中共政権がアメリカの軍事衛星や商業衛星を破壊したり、無力化したりする能力を開発することにコミットしていることを示している。
中国共産党(中共)は何年も前から対衛星兵器の開発を加速させている。2007年1月11日、中共は運動エネルギー兵器利用の殺傷兵器を使用し、地球上空540マイルを周回する2千ポンド(約900kg)の老朽化した中国(中共)の風雲1号 C 気象衛星を破壊した。この攻撃は、現在も他の衛星を危険にさらし続けている大規模なデブリフィールドを作り出した。
中共は、地上発射の運動エネルギー利用の殺傷兵器で衛星を破壊する能力とともに、衛星を混乱させたり無力化したりできる電子戦能力を開発してきた。さらに、他の衛星を監視したり、破壊したりするために、他の衛星の隣に移動することができる「キラー衛星」を打ち上げている。これらの能力は、戦略国際問題研究所の報告書に詳述されている。
中共政権のASAT能力の積極的な開発は、バイデン政権が直接上昇式の衛星攻撃兵器の実験をしないと一方的に約束したことと相まって、中国(中共)がアメリカとの差を縮めつつあるだけでなく、ASAT能力に関してはすぐにアメリカを追い越すことを意味している。
ここで疑問が生じる。中共政権が宇宙の軍事化に反対する多くの声明を出していることを考えると、もし台湾をめぐって戦争が勃発した場合、中共政権はこれらの兵器を使用するのだろうか? 確かなことは誰にもわからないが、中共政権が台湾の支配権をめぐる戦争に勝つために、どんな手段でも使わないとは考えにくい。
しかし、中国(中共)が単にアメリカの対衛星兵器の使用を抑止するつもりなのかどうかにかかわらず、中共政権はいかなる紛争でも確実に使用する別の衛星能力を急速に増強している。実際、中国は9月24日に海上プラットフォームから4基目となる捷龍(Jielong)3号固体ロケットを打ち上げ、太陽同期軌道に8基のリモートセンシング衛星を追加した。これは2024年の40回目の打ち上げとなり、中国航天科技集団(CASC)が2023年に達成した50回の打ち上げ記録を上回るペースにある。民生用と軍事用の両方に使える衛星を製造するという中国のデュアルユース政策を考えると、大半は軍事用である可能性が高い。
これに伴い、2024年5月2日、米宇宙軍の情報担当作戦部長代理、グレゴリー・ギャニオン少将は、中国(中共)が大規模なリモートセンシング衛星ネットワークを展開しており、米軍が台湾防衛に動いた場合、その標的とするのに利用されると警告した。同氏によれば、過去2年間に中国(中共)が配備した400基の衛星の50%以上は、地球上の物事を追跡するために設計されたものだという。残りの衛星は特に地上の目標を追跡することはないかもしれないが、通信中継や電子情報などの軍事的用途に使用できないわけではない。
アメリカを超えるというコミットメントをさらに示すように、中国(中共)政府は2023年10月、138機の予定だった高性能衛星「吉林1号」を2025年末までに300機配備すると発表した。しかし、単に数の問題ではない。中国の衛星は急速に高性能化し、高度化している。
2023年4月、中国(中共)の研究者は中国で発表された論文の中で、米海軍の資産をリアルタイムで正確に追跡できる衛星があると主張した。
これらの研究者は、彼らの衛星の1つ(機種は特定されていない)が自動的にニミッツ級空母のUSSトルーマンを発見し、特定したと主張した。その後、衛星はトルーマンとその護衛艦7隻を追跡し、トルーマンの位置の正確なリアルタイム座標を北京に更新し続けたという。
もし中国(中共)が本当に、ほぼリアルタイムで追跡し、情報を対艦弾道ミサイル部隊に中継する能力を得たとしたら、中国(中共)政権はその「キルチェーン(目標の検知から攻撃までの一連のプロセス)」の範囲と威力を急進的に増大させるため、米海軍部隊が台湾の近くで活動するのは非常に危険なことになる。
中国の研究者によると、衛星が実用的なデータを作成できるのは、非常に効率的な人工知能アルゴリズムと、画像データを処理するための専用のAIハードウェアを使用できるためだという。これらのデータは、中国(中共)が非常に強力なDF-21DやDF-26などの対艦ミサイルを操縦中の船舶に誘導することを可能にする、正確でほぼリアルタイムの標的データを提供するために使用することができる。
中国(中共)はまた、2025年までに300機の吉林1号衛星を配備する予定だ。AIのアップグレードのおかげで、これらの小型の安価な衛星は、F-22と見られる飛行機を追跡できることを実証した。
これらの新しい能力を総合すると、中国は広大な海をまたいで艦船を自動的に探知・識別し、ミサイル発射センターにリアルタイムで艦船の情報を提供することができることを意味する。これにより中国は、海上を航行する貨物船やその他の米海軍艦艇を攻撃するために必要な「キルチェーン」を構築し、維持する能力を根本的に向上させることができる。中国はすでに、マッハ10のDF-21Dとマッハ18のDF-26Bという2つの極超音速対艦弾道ミサイルのデモンストレーションに成功している。これは、中国がこれらの「空母キラー」と呼ばれる極超音速ミサイルを使用して、アメリカの空母が台湾を支援できる範囲に到達する遥か前に攻撃することが可能であることを意味します。
最後に、CASC衛星とともに、中国の上海スペースコム・サテライト・テクノロジー(SSST)は「千帆星座」計画に着手した。今後6年間で、何千ものスターリンクのような衛星を地球低軌道に投入する予定だ。これらの衛星は、その商業利用とともに、ウクライナにこの能力を提供してきたスターリンクに匹敵する軍事能力を提供することは間違いない。
もちろん、中国の正確な衛星および対衛星能力については、まだ不確定要素があるものの、それを過小評価するのは愚かなことである。従って、台湾をめぐる中国との衝突の可能性が迫っている今、わが国の軍事計画者たちは、中国が最低でも、米海軍の艦船を標的にする衛星の能力を守るために、その広範なASAT能力を使用し、わが国の監視・標的能力を奪うために使用する可能性があるという事実に適応しなければならなくなるだろう。
その結果、アメリカの軍事計画者たちが5年前に頼りになると考えていた中国(中共)に対抗する選択肢は、再評価されなければならない。
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