コメ不足の主因は? 政府備蓄米は放出する?「令和のコメ騒動」について

2024/08/29
更新: 2024/08/30

現在、多くのスーパーや商店の棚が空になるなど全国各地のスーパーなどでコメが品薄になっており、「令和のコメ騒動」と呼ばれる事態となっている。大阪府の緊急調査では、府内の小売店64店舗のうちおよそ8割で米の品切れが発生しているという。

米価格にも影響し、7月は前年同期比18%上昇し、過去20年間で最大の上昇となった。

スーパー大手の「イトーヨーカ堂」では、全国の店舗で今月から購入できるコメの数をひと家族当たり1点のみに制限する対応を取っている。

コメ不足の主因とは

農水省の見解によると、2023年産米の需要が堅調に推移したことなどを背景として、2024年6月末の在庫量は、近年では低い水準となっている。

こうした中、米の在庫が最も少なくなる端境期である8月に、南海トラフ地震臨時情報とその後の地震や台風等により買い込み需要が発生したこと、輸送業者がお盆休みに入った影響もあり、商品の搬入に停滞が生じたことなどにより、品薄となった店舗が生じていると説明した。

一方、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、コラムで「米価上昇の根本的な原因は『減反(生産調整)』だ。減反とは農家に補助金を与えてコメの供給を減らして米価を上げるものだ。数年前から農業団体は農家にもっと生産を減らすように指導してきた」との考えを示した。

「今は水田の4割を減反して生産量を700万トン以下に抑えている。しかも余裕のない需給操作なので、今回のようにささいなことで価格は変動するというのが実態だろう」

山下氏は、1993年の平成の米騒動は冷夏が原因といわれているが、根本的な原因は減反であるとも述べた。

政府備蓄米とは、解決策になるか

緊急時につき政府から市場に米を供給する備蓄米制度というのがある。

1993年には米が大凶作となり、消費者がお米を求めてスーパーに殺到した経験を踏まえ、常時、米を供給できるよう、1995年から政府による米の備蓄を制度化した。 100万トン(10年に一度の不作にも供給できる量)程度を目安に備蓄しているという。

直近では、東日本大震災や福島第1原発事故の影響で「コメ不足」となり、2012年に備蓄米4万トンが供給された。

26日、大阪府は米の流通状況を改善するために農林水産省に対し、政府の備蓄米を小売店などに早期に流通させるよう要望したと発表。大阪府の吉村洋文知事は、「無くて困っている方がいるのに、備蓄米を放出しないという判断を続ける。倉庫に眠らせておく方がいいんだという理由が全く分からない」と述べ、備蓄米の放出を呼びかけた。

これに対し、坂本哲志農林水産大臣は27日の閣議後記者会見で、「民間流通が基本となっている。米の需給や価格に影響を与える恐れがあるため、慎重に考えるべきものと考えている」と述べ、否定的な見方を示した。

備蓄米を放出するとすれば、入札などで、1〜3週間ぐらいかかる可能性があり、効果的ではないということかとの質問に対しては、坂本農水相は「あくまでも民間(流通)が基本となっている」「流通関係に影響を与える恐れがあるので、そこは慎重に考えなければいけない」と答えた。

坂本農林水産相の回答に対し、吉村知事は反論。「開放しないという理由が、需給はひっ迫していないということと、価格に影響を与える、この2点が大きな理由だと思う。需給がひっ迫していないかどうかは現場を見てほしいと思う。僕は需給がひっ迫していると思う。米の価格はかなり急騰している。それは現場に行けばすぐに分かる」と述べた。

府政と国政の意見対立が鮮明となった。

また28日、吉村知事は、18歳以下の子供や妊婦を対象に5千円分の米を購入できる「お米クーポン」第3弾の使用期限を当初の10月末までから、11月末まで1か月延長すると発表した。

コメの品薄緩和はいつ

それでは、米の品薄が緩和されるのはいつぐらいになりそうなのか。

坂本農林水産相は、新米が出回る9月ごろに解消するとの見通しを示し、今後順次回復していくと見込んでいると強調。消費者に「必要な量だけお米をお買い求めいただくなど、落ち着いた購買行動を」と理解を求めた。

また、米の取引業者である集荷業者や卸売業に対して、常日頃から集荷・販売・在庫状況等の情報を徴収して毎月公表し、円滑な流通を努めていくよう働きかけているとともに、卸売大手5社と話し合いをして、円滑な集荷販売を求めたと明かした。

さらに、こども食堂やフードバンクへの政府備蓄米の無償交付について、来月初頭から現在は全国10か所の申請窓口を全都道府県域に設置するなど、備蓄米を提供できる体制を来月からスタートするとしている。

米作りが盛んな兵庫県北部の豊岡市で28日、極早生品種(早い熟期に属する)「ちほみのり」の出荷が始まっている。

大紀元日本 STAFF