ホワイトハウス、中国製鉄鋼の関税回避防止へ

2024/07/11
更新: 2024/07/11

7月10日、米高官は、中国がメキシコ経由で鉄鋼とアルミニウムを米国に輸出する、関税回避の抜け道封じの方針を発表した。

バイデン大統領は、メキシコから輸入される鉄鋼がメキシコで溶解・鋳造したものであれば、免税の恩恵を受けることを確約する布告に署名する予定だ。ホワイトハウスは、輸入業者は鉄鋼製品の原産地情報を提供する必要があると確認した。

バイデン大統領とメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、この取り組みを共同発表する予定である。

推計によると、2023年にはメキシコから米国に380万トンの鉄鋼が輸入された。そのうち87%は北米で溶解・鋳造されたが、13%は米国、カナダ、メキシコ以外で溶解・鋳造されたものだ、これは政府の主な懸念事項だ。

米国家経済会議のラエル・ブレイナード委員長は、「これらの措置は、中国がメキシコ経由の製品輸送で米国の関税を回避するという主要な抜け道を修正するもの」と述べた。

「中国が自国の独自のルールに従って行動するには、その影響力や規模が大きすぎる」

カナダ政府も5月に、中国製の鉄鋼とアルミニウムの「裏口」として機能しないことを確認した。

カナダのクリスティア・フリーランド財務大臣の報道官・チャトワル氏は声明で「カナダは、ダンピングや補助金付きの輸入品を防ぐための強力かつ迅速な貿易救済制度を備えている、不公平な貿易から労働者と産業を守ることに尽力している」と述べた。

バイデン氏、中国の鉄鋼業界を標的に

バイデン大統領は以前から、中国製の安価な輸出品が米国の鉄鋼産業に与える影響について議論してきた。

4月にピッツバーグで全米鉄鋼労働組合に向けた演説で、バイデン氏は「彼らは競争していない。彼らは不正行為をしている」と述べた。

今年初め、ホワイトハウスは中国に対する新たな関税と引き上げを発表し、アルミニウムと鉄鋼の輸入関税を7.5%から25%に引き上げた。

2018年、当時のトランプ大統領は貿易拡大法第232条に基づき、一部の輸入鋼製品に25%の関税を、一部のアルミニウム輸入品に10%の関税を導入した。しかし、トランプ前大統領は他の鉄鋼およびアルミニウム製品に対して関税を引き上げなかった。

トランプ氏は、中国からの輸入品に最大60%の関税を課し、米国に入るすべての製品に一律10%の関税を提案している。

トランプ前大統領は、バイデン大統領が中国に対して高い関税を課すのに時間がかかりすぎたことを疑問視している。トランプ氏は5月に、記者団に「彼らはずっと前にそうすべきだった」と述べた。

最近数か月、民主党のジョン・フェッターマン上院議員やボブ・ケイシー上院議員などが、バイデン大統領に対して「中国の不正行為からアメリカの鉄鋼を守る」よう促している。

上院議員らはバイデン大統領に宛てた書名の中で、関税を維持するか、「必要に応じて関税を引き上げる」ことを提唱しており、これが「労働者支持の貿易政策の重要な一部だ」と述べた。

議員らは5月2日の書簡で「アメリカの労働者は、公平な競争の場があれば誰とでも競争できる。今は支援を撤回する時ではない」と記した。

中国の鉄鋼

中国は世界最大の鉄鋼生産国であり、世界の鉄鋼生産量の50%以上を占めている。国内セクターは大規模な補助金を受けており、北京政府は人工的に低価格で外国市場に輸出を加速させることができる。

S&Pグローバル・コモディティ・インサイトによると、2024年第1四半期に中国の鉄鋼完成品 と半製品の純輸出は前年比で35%増加し、616万トンに達した。2024年1~3月に、約2400万トンの鉄鋼を輸出した。

世界鉄鋼協会のデータによると、中国の鉄鋼生産も回復しており、5月には前年比2.7%増加し、9290万トンに達した。

比較すると、5月の世界の粗鋼生産量は1億6510万トンで、前年同月比で1.5%増加している。

中国は米国の鉄鋼供給のわずか4%を供給しているのだが、政府高官はホワイトハウスがこの問題に「先見の明」を持って取り組んでいると述べている。政府は積極的に対応し、安価で炭素を大量に排出する鉄鋼の輸入を防ぎ、アメリカの企業と労働者を保護することを目指している。

一方、今年は鉄鋼価格が下落しており、バイヤーはコロナパンデミックと建設活動の減速による供給過剰に対処している。熱間圧延コイルの価格は年初来約40%下落している。

 

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。