今月13日に迎えた「少額投資非課税制度(NISA)の日」。NISA枠の中で投資家に最も人気が高いのが、先進国・新興国の企業数百社の株式指数に合わせた投信商品「オールカントリー・ワールドインデックス(オルカン)」だ。最近、オルカンに注目の見直しが行われた。指数を算出するMSCIは12日、構成銘柄を変え中国企業66社を除外したのだ。低迷続く中国経済から投資資金の手を引くサインとも目されている。
MSCIは今回、組入銘柄の入れ替えに伴い101銘柄を除外し24銘柄を追加した。除外された中国の66銘柄には遺伝子大手の華大基因(BGI)、中国南方航空、不動産の金地集団や緑城中国、テック企業の微博などが含まれていた。いっぽう、新たに家電メーカーの美的集団、バイオテクノロジー企業の巨大生物遺伝とMGIテック、中国招商高速網絡科技、寧波三星医療電器の5銘柄を加えた。
2月29日の取引終了時点で実施する。目論見書によれば、オルカンの対象インデックス構成比率は米国が6割以上を占め、中国が全体の3.2%程度。日本は5.5%となっている。
66銘柄除外を受けて、旧正月の連休明け香港株は大幅下落から始まった。
活況の日米市場 下落に歯止めのかからない中国経済
米国の株価指数S&P500が5000を超え史上最高値更新するなど、西側市場は活況を迎えている。日経新聞13日付によれば、対面およびネットを合わせた証券会社10社を通じたNISA枠購入額が1兆8千億円を超え、旧NISAの3倍の資金流入となっている。
日本と米国の株式市場が活況を呈する中、中国では株価の下落、資金の国外脱出にブレーキがかからない状況が続いている。今月、日経平均が3万8千円台の記録的高値をつけたのも、中国市場からの投資資金が日本へと流出しているとの見方もある。
中国市場は数年にわたる不動産市場の低迷と新型コロナウイルス流行による経済停滞しており、投資家たちは失望を示している。2月5日、上海株式市場の株価指数は一時、約5年ぶりの安値を記録。国際金融協会(IIF)によると、2023年の1年間に中国の株式・債券市場から流出した外国マネーの額は845億ドルに上る。
2024年1月下旬、香港の裁判所が不動産大手「恒大グループ」に対する清算命令を下し、投資家心理がさらに悪化した。さらに、共産党党首・習近平は証券行政トップを突然「更迭」するなど、中国株市場は不安定な状況にある。
失速する中国経済
昨年12月、格付け会社ムーディーズは中国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更、2023年7〜9月の外資企業の中国投資は118億ドルのマイナスとなり、統計が始まった1998年以降、初めてマイナスとなった。
世界銀行は昨年12月14日の報告書で、中国経済は不動産業の不振や外国の需要の減退、消費者信頼感の揺らぎといった「脆弱性」を抱えており、経済成長率は4.5%に落ち込むと予測した。日本の経済研究センターは同月18日、不動産バブルが崩壊すれば、2027年にはゼロ成長になると予測した。
中国問題専門家は、実態は研究機関の予想よりはるかに悲惨だと指摘する。米サウスカロライナ大学エイケンビジネススクールの謝田教授は、現在の中国政府、企業、個人の総借金額は、GDPの300%に達すると推定。「中国共産党は、利息の引き下げや頭金の低減、大学生や退職者などに住宅購入を促すなど、あらゆる方法を用いているが、何の改善の兆しもない」と指摘した。
米国在住の経済学者の程暁農氏は、中国政府が公表する経済データと実際の状況には相違があり、外国の学者が中国経済の最も真実かつ深層の問題を把握するのは難しいと述べた。不動産と債務不履行が引き起こす問題が政権の安定性に影響を与えるため、中国政府はデータを提供せず、バブルの崩壊を認めないだろうとの見方を示した。
「ハードランディング」に備える
中国経済の先行きについては、日本の専門家も懸念を示している。目白大学大学院講師でアジア太平洋交流学会会長の澁谷司氏は昨年末、大紀元の取材に対し、中国の銀行のおよそ80%が不良債権を持っているとの情報があり、金融危機のリスクが高まっている、と指摘した。
地方政府が抱える財政難は、中国社会を揺るがす時限爆弾だと澁谷氏は考えている。大都市でも公務員の給料未払いや、警察組織の規模縮小が行われており、社会の不安定感は高まる一方だ。
エコノミストの森永康平氏は昨年、大紀元の取材に対し、中国経済は「日本の『失われた10年』と同じようになるとの意見もあるが、むしろ日本よりも酷いことになる可能性がある」との考えを示した。
社会主義体制のもと、当局が経済をコントロールしてきたが、「今はその歪みが少しずつ表面化しているようだ」と指摘。「中国経済は市場原理を完全に取り入れたわけではなく、ある程度国が主導権を握っており、政府の都合のいいように操作している。それがうまくいっている間は一定の良い結果を出せるかもしれないが、いざ雲行きが怪しくなると、コントロールできなくなってしまう」と警鐘を鳴らした。
中国経済の失速が明らかになるなか、有識者は対中依存する日本の貿易構造を見直すべきだと主張した。原発処理水に対する中国共産党の情報戦・世論戦により、日本製の食料品の対中輸出は激減、日中間の「デカップリング」を加速させる一因となった。
シンクタンク「国家ビジョン研究会」代表理事の無盡滋氏は、幕末の儒学者・横井小楠の考えを引用し、「多少儲かっても、正義がない国とは付き合うな」と述べ、「今の体制が続く限り、まともな商売などできないのだ」と強調した。
長尾敬前衆議院議員は、「今までの中国依存体質こそが異常だった」とし、対中輸出で減少した分は「価値観を共有できる他国に販路を開拓していくべきだ」と指摘した。
澁谷氏も「いきなり中国経済が崩壊してしまう前に」早期撤退することを強く勧め、日本との関係を強化しているベトナムやインドなどを代替地として挙げた。
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