青島ビール放尿男を行政拘留 再び問われる「中国の食品は安全なのか?」

2023/11/02
更新: 2023/11/03

先頃、中国の大手ビールメーカー、青島(チンタオ)ビールの工場で男性従業員が「ビール原料に放尿している」とみられる動画(10月19日に投稿)がSNSで拡散された。この「青島ビール事件」は、中国のみならず、海外でも大騒ぎとなった。

この騒動を受け、中国で120年の歴史を誇るブランド「青島ビール」の名声は地に落ち、株価は急落した。11月1日「放尿した男は、地元の公安当局に行政拘留された」との報道があった。

世界に広がった衝撃

この件について「青島ビール」側は、事件の発覚後「放尿された原料の麦芽は完全に密封した」と発表。また最新の発表では、事件に至る経緯について次のように公表している。

「当時、男はトラックで運ばれてきた原料の荷降ろしをしていた。別の男と口論になり、その後、積み荷のコンテナ内で放尿した。放尿の様子は、現場にいた別の男が撮影してSNSに投稿した」

そのほか、青島ビールはこの件に関して「消費者の皆様に心よりおわびします」と正式にコメントを発表しているが、その信頼回復への道は極めて遠い。すでに今回の青島ビールの「放尿事件」は、中国国内のみならず、世界にも衝撃を広げるまでになっている。

そのため、SNSには「今回が初めてじゃないだろう」「中国では、よくあることだよ」など、半ば呆れたようなコメントが相次ぐとともに「中国製食品の安全性」が改めて問われることになった。

青島ビールは中国の代表的なビールで、日本や韓国にもファンが多い。日本の中華料理店などでも青島ビールは人気のドリンクだ。日本の愛飲者からも「これを見てしまっては、もう青島ビールは飲めないよ」「しばらくは買わない」といった声が多く寄せられており、事件の波紋は日本のビールファンの間にも広がっている。

中国における「食品安全性の欠如」

「ビール原料に放尿」は論外であるとしても、中国における食品の安全性の欠如は、以前から深刻な社会問題であると指摘されてきた。

実際、驚くほど管理がずさんで不衛生な環境のなかで、食品や飲料が生産されているのだ。それらは中国の国内向けばかりでなく、日本や韓国など海外に輸出されるものもある。

そのなかから時折暴露されてニュースになっている事例は、まさに「氷山の一角」に過ぎない。関連情報をネットで検索すればするほど、中国製の食品や飲料に対して、激しい嫌悪感と拒絶反応を起こしてしまう。

例えば2021年に、キムチなどの「白菜の漬物」の製造過程を映した動画が中国のネットに流出して大騒ぎになった。

その動画のなかには、錆びた土木工事用のショベルカーが白菜をすくい取る様子や、裸の作業員がプールのように大きい漬物容器なかに浸かりながら「体でかき混ぜている様子」が映し出されていたからだ。

韓国に輸出されるキムチのほとんどが、実は中国産である。そのため、この件が明るみになった後、韓国における中国産キムチの輸入量は一時激減したほどだ。

なぜ「不良食品」が生まれるのか

最近では、中国の学校の食堂から「ネズミの頭が出てきた事件」が何度も起きている。

そのほか「ソーセージのなかからビニール袋」や「食品の賞味期限の改ざん」など、不良食品に関する話題は尽きないが、それらを二つのカテゴリーに分けると、およそ以下のようになる。

一つは、衛生管理や安全管理、法律や規定にもとづく品質管理などの、製造現場で義務づけられた各種の管理が全くなされていないために発生する、いわば必然的結果としてできた「不合格食品」である。

そしてもう一つは、完全に意図的な背任行為によって、いわば消費者を騙すことが前提で生産される「嘘つき食品」である。

こうした「不良食品」が、中国で多く生まれる原因は何か。その答えは、極めて明快である。生産者や販売者の道徳が欠如しているため、責任感をもたず、人間の食物を作る誇りも理念も失い、ただ「売ってしまえばいい」としか考えないからだ。

「品質が良くて、売れる」ならば健全な商業活動であるが、今の中国はそうではない。顧客や消費者を騙してでも、とにかく「売ってしまえばいい」というレベルにまで堕落している。

そうした不条理だらけの経済は、体制からして一度リセットされなければ、本当の再生はない。

しかし、腐敗の「模範生」である中国共産党の統治下では、もはや中国経済の再生は望むべくもないだろう。中国で「不良食品」や「不良製品」が無尽蔵に生まれる根源的な理由は、そこにある。

再び問われる「中国食品の信頼性」

今回の「放尿事件」のように、人が聞けば吐き気をもよおすような事例が発覚しなければ、このメーカーは知らん顔をして、全てを闇に葬ってしまったはずだ。もちろん「その原料」で作られた青島ビールは、誰かのグラスに注がれて、うまそうに飲まれたに違いない。

今後、青島ビールがどうなるかは、まだ分からない。ただ、言うまでもないが、ビールの原料に放尿した不届き者を処罰するだけでは、失った信頼の回復にはつながらないだろう。

そうした究極的な意味において「中国の食品は安全なのか?」が再び問われている。

SNSに寄せられたコメントにもあった「中国では、よくあることだよ」は、そのまま聞き流せる冗談ではないからだ。

 

(箸でつまんだソーセージから出てきたのは、なんと「ビニール袋」)

 

(隠し撮りされた、火鍋のタレの「賞味期限」を改ざんする様子)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。