豪中対立による中国共産党の貿易制裁が、豪州の経済に与えた影響はほとんどなかったことが、豪生産性委員会の報告書で明らかになった。豪州の貿易転換により、制裁の効果が相殺され「世界の貿易構造の再編成につながった」と指摘した。
報告書によると、中国による豪州産品への貿易制裁が豪州の国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)に与えた影響はそれぞれ1%未満だった。
最も顕著だったのはGDPで、わずか0.009%減にとどまった。一方、最も影響が大きかったのは第一次生産部門の生産高で、1.4%減少した。
中国共産党は2020年、モリソン前政権が新型コロナウイルスの起源をめぐる調査を求めたことで、豪州産の石炭や牛肉、農産物など多くの品物の輸入を制限する制裁措置を講じた。
特に中国が最大の輸出先である豪産ロブスターや、最大218%の報復関税を課せられたワインは大きな影響を受けたが、豪州の経済全体に大きな損失を与えることはなかった。一方で「一部の企業は大きな損失を被った」と報告書は指摘した。
豪州産ロブスターは現在、輸出業者が香港やベトナムを含む新市場への参入に取り組んだことで輸出額は回復し始めている。
また、大麦と石炭については、市場を失った輸出業者が他の市場を見つけることができたため、大きな影響はなかったと述べた。
豪州経済の繁栄
「世界の需要と供給が大きく変わらない限り、生産者への(貿易制裁による)打撃は、世界貿易の縮小ではなく、むしろ世界の貿易構造の再編成につながる」と報告書は指摘する。
豪州戦略政策研究所(APSI)が豪統計局(ABS)の輸出データを分析したところ、2022年8月の豪州の輸出に占める中国の割合は29.5%で、2021年7月の42.1%から減少した。
しかし、APSIのデイビッド・ウレン上級研究員によると、ワインとロブスターの輸出業者以外は、新たな市場で成功を収めることができたという。一方で、貿易制裁は豪州よりも中国に経済的な打撃を与えたと指摘した。
また、豪生産性委員会は報告書の中で、豪州の輸出需要が増加したことにも触れた。報告書によれば、中国の貿易制裁により対中輸出は総額で6.7%減少したものの、豪州の輸出品を求める他の貿易相手国からの需要が増加したため、豪州の輸出需要は2.2%増加した。
特に石炭は日本や韓国、インドが中国に取って変わるなど「世界の重要鉱物の供給を多様化したことで広範な国に利益をもたらす」ことができたと指摘した。
豪ローウィー研究所の世論調査によれば、中国共産党による豪州への貿易制裁や、アジア太平洋地域における中国の軍事的脅威の高まりを背景に、「中国を信頼している」と答えた豪国民の割合は13%と一貫して低い水準にとどまっている。
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