長らく日中関係の強化に取り組んできた二階俊博自民党元幹事長が、日中友好議連会長に就任した。半導体網の中国排除や台湾問題で米欧と足並みを揃える岸田政権にとって、二階氏の役割はどれほど影響をもたらすだろうか。
中国共産党側は好意的に捉えている模様だ。薛剣駐大阪中国領事は「是非、中日友好の力を結集して頂いて、この目標を実現させるべく皆でご一緒に邁進して行こう!(原文ママ)」と述べた。人民日報も速報を打った。
中国外務省汪文斌報道官もまた新会長の就任を歓迎した。二階氏について「長年にわたり両国の交流と協力を促進」する人物と評し、「議連との交流と協力を強化したい」と述べた。
二階氏はかねて中国関係を重視しており、2015年の訪中には3000人もの旅団を帯同した。国会期末となる今年6月末予定の訪中計画の詳細はわからない。昨年11月、澎湃新聞の単独インタビューに応じた同氏は1万人の中国訪問団を組むのも難しくないと語っていた。
「全国旅行業協会会長を約30年務めている。私にとって中国訪問団を組む際は『一緒に行こう』と声をかけるだけですぐに参加が決まるのだ。私にとって5000人や1万人の中国訪問団を組むのは難しくない」と話した。
大型訪問団を伴っての訪中意義について、二階氏は「直接対話」が重要だと語っている。「ただ対岸で日中友好や中日友好を議論するだけではだめで、全力で心を込めて相手に接しなければならない」「中国と日本はどちらもアジアのリーダーだ。話し合って、すべての分野で相互協力に努めることが重要だ」
岸田政権は中国に慎重姿勢
いっぽう、岸田政権は発足時より中国との関係には慎重姿勢だ。米中対立が続く中、1年半前に「誤解を生みかねない」と林芳正氏が外相就任とともに同議連会長を退任した。
昨年は日中国交正常化50周年記念行事が目白押しだったが、岸田首相自身は出席を控えた。慣例だった前駐日中国大使の離任式は参加せず、3月に着任した呉江浩新大使とも面会していない。
世界の戦略物資とされる半導体についても、日本は米国、オランダに合わせて対中規制を発動している。3月31日には、中国を対象に23品目の最先端半導体製造装置の輸出規制を強化した。中国共産党は「中国包囲網に加担した」と強く反発している。
こうしたなか、日中関係において二階氏の役割は限定的との指摘もある。
遼寧大学日本研究センター客員研究員の陳洋氏は深圳衛星放送のなかで、自民党内で役職についておらず「二階派」は辺境派閥だとした。このほか、現在の日本政府の対中政策と国内の対中世論の影響を受けて、舵取りも困難との見方を示した。
実際、19日の会長就任会見では自民党幹部が席に並ぶことなく、岡田克也議員(立憲民主党)と志位和夫議員(日本共産党)が両どなりとなった。
「二階氏は新任会長として中日関係の改善に積極的に貢献するだろう。しかし、現在の党内の立場と全体的に(改善には)消極的なムードと合わせて潤滑油の役割を果たすのは容易ではないかもしれない」と陳洋氏は指摘した。
「日中友好7団体」の1つ
前出の汪文斌報道官は会見で、日中友好議連が「日中友好7団体」の1つであると強調した。日本では議連が政策立案や国際交流等を念頭にしているのとは異なり、中国側は日中友好議連を「友好団体」と公式に認定している。
中国側が友好団体と呼ぶ団体は7つあり、議連のほか日中友好協会、日本国際貿易促進協会、日本中国文化交流協会、日中経済協会、日中協会、日中友好会館。
実はこれらの「中日友好7団体」について、米国政府は、中国政府が対日政治工作機関として活用する組織とみなしている。2019年発表の国防省情報局(DIA)の報告では、中国共産党と中国軍が、日本の対中世論や政策を中国側に有利に動かすために日中友好議連を含む友好団体を利用していると指摘している。
友好団体は統一戦線とも関係を築くとされ、昨今、欧米で摘発されている中国「秘密警察署」のいくつかは、こうした友好団体の施設と同一住所だった。東京や名古屋の拠点も例外ではない。
3月には製薬大手アステラス社員が北京で拘束された。駐中国日本企業からなる「中日商会」幹部職を経た人物だったという。「日中友好人士」と呼ばれ日中青年交流協会理事長を務めた鈴木英司氏は6年も収監され、昨年10月にようやく刑期を終え解放された。
日本側の関係者が彼らの経験を直視するならば、6月の訪中団に加わるかどうかの選択はおのずと決まるかもしれない。
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