米国ではFBIが中国「秘密警察署」を摘発したが、同様の拠点は日本国内にも存在する。この中国当局の出先機関からスパイ勧誘を受けた男性はエポックタイムズの取材に対し、脅迫と利益誘導を併用するその手法を打ち明けた。日本の政治家と識者は、秘密警察署を摘発するよう政府に求めている。
子供を脅迫材料に…中共スパイ勧誘の実態
「中国の国家安全部は私の情報をすべて把握している。彼らは私の離別した妻に多額の金銭を渡し、スパイにならなければ、子供に会えなくなるぞと脅してきた」。
今年1月、日本に住む中国人男性の石明さん(仮名)は取材に対し、中国の工作員が脅迫と利益誘導を併用しながらスパイ勧誘してきた体験を語った。
中国の海外における秘密警察署の存在を暴いたスペインの人権団体「セーフガード・デフェンダーズ」の報告書によると、その拠点は世界の数十カ国に広がり、日本では東京や名古屋、福岡などに設置されている。
「昨年12月16日だった。新宿で中国秘密警察署の4人に囲まれ『話をしよう』と言われた」と石明さん。「よくない雰囲気を感じとり、『忙しいのでまた今度』と断った。しかしそのうちの一人が『(自分達は)どこの者か知っているはずだ』と凄んで、私の携帯電話を取り上げた」。
勧誘は次第にエスカレートしていき、「アメとムチ」で石明さんの生活を翻弄した。仕事関係先に嫌がらせをするほか、高額報酬で情報収集の協力を求めることもあったという。提示した額は「年収1600万元(約3億円)」だった。中国国内の公安当局者から電話がかかってくる場合もあったという。
欧米で進む取り締まり
中国の海外警察署は、外国でのスパイ工作などを行う中国共産党統一戦線工作部との繋がりも指摘されている。他国の主権を侵害する中国共産党の行為に対し、自由主義諸国は強く反発している。
米国では連邦捜査局(FBI)が秘密警察署の関係者として男ら2人を逮捕した。昨年秋にもFBIはニューヨーク・マンハッタンの中国警察拠点を家宅捜査しており、資料を押収していたという。
FBIのレイ長官は昨年11月、上院安全保障委員会の公聴会で、中国が法的に認められない「警察署」を設置することは米国の主権侵害にあたり、米国内における同署の影響力工作の展開に強い懸念を示した。
カナダ警察は3月、中国警察拠点を調査していることを明らかにした。ドイツ、オランダ、アイルランドも昨年同署の閉鎖を要請している。
2月に東京で開催された「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の会合では、「セーフガード・デフェンダーズ」のローラ・ハース氏が出席し、G7サミットで中国の秘密警察署について議論すべきだと主張した。
識者「日本も動くべきだ」
FBIによる中国秘密警察署の摘発を受けて、識者は日本政府も行動すべきだと訴えている。
中国共産党の浸透工作を調査している長尾敬前衆議院議員はエポックタイムズの取材に対し、「日本のインテリジェンス機関の調査能力は海外からも高い評価を受けている。日本政府が(秘密警察署について)知らないはずないと思っている」と述べた。
長尾氏は、捜査活動で先行する米国とも連携し、収集した情報を活用して実務に落とし込むべきだと指摘した。そして、スパイ防止法の制定を急ぐべきだと強調した。
福井県立大学名誉教授の島田洋一氏は自身のツイッターで、マンハッタンのチャイナタウンにある海外拠点には「中国総領事館の人間も度々出入りしていたという」と指摘、「日本も動くべきだろう」と綴った。
経済安全保障マネジメント支援機構上席研究員の藤谷昌敏氏は昨年12月、日本戦略研究フォーラムへの寄稿のなかで、中国の秘密警察署について「単に海外に居住する中国人の人権侵害に留まらず、国際法の原則に違反し、第三国の主権を侵害している行為」であると強く批判した。
警察署は「単なる行政拠点」だとする中国側の主張に対し、藤谷氏は「実際には、反体制派や人権擁護者、ウイグル人」に対する誘拐が拉致が行われていると指摘。「中国の体制を批判した人物の親族を逮捕・拘留して帰国するよう圧力をかけた例、法輪功信者に対して、家族に危難が降りかかると脅して帰国させようとした例、難民認定された者を難民キャンプで拘束して連れ去った例」などがあると列挙した。
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