東京電力福島第一原子力発電所の事故から12年以上が経過した今年、政府は多核種除去設備(ALPS)で希釈した処理水をこの春にも海洋放出する予定だ。中国外務省や官製メディアが批判的に伝えるなか、日本の駐中国大使館(以下、日本大使館)は3日、浙江省メディアの取材を受けるも「回答が正確に反映されていない」とし、回答文書の全文公開に踏み切った。
「日本大使館は浙江日報・潮新聞の書面取材に応じた。しかし残念ながら、2日発表の報道は、当館の回答の一部のみを引用し、内容を正確に反映していない。このため当館は回答の全文を公開する」。日本大使館は中国語でこうツイートした。
日本大使館はALPS処理水のトリチウム濃度は規制値の40分の1以下、トリチウム以外の放射性物質も100分の1以下であり、海外の多くの原子力発電所の排出量よりも低いと述べた。また、「国際的な基準やガイドラインに従った放射線の環境評価の結果、ALPS処理水の海洋放出は、生物濃縮や長期蓄積を考慮しても人や環境にとって十分に安全だ」と回答した。
いっぽう、2日付の潮新聞は「日本大使館は近隣の国や地域の漁業や漁師への影響について回答も説明もしていない」と伝え、さらには日本側が「パンドラの箱を開けた」「なぜ一国の問題のために世界がお金を払わなければならないのか」と書き立てた。
日本大使館は、アジア圏の地図と日本、中国、台湾、韓国の8つの原子力発電所からの年間トリチウム排出量を提示した。福島第一と比較すると、中国の広東省楊江原発、福建省寧徳原発、秦山第三原発、遼寧省本安河原発はそれぞれ4倍から7倍に相当する量を排出している。
さらに、日本大使館はこうした中国の原子力発電所からのトリチウム排出について「実は近隣諸国と合意していない」と指摘した。
IAEAの定める国際標準に基づいた評価を経て福島第一原発のALPS処理水は放出される。にもかかわらず、中国共産党政権は「問題がある」との批判を繰り返している。中国外務省の秦剛報道官は7日の記者会見で、処理水排出をめぐり「日本に責任ある対応を求める」と発言した。
秦剛氏の発言を受けて、河野太郎特別任命相(消費者及び食品安全)は10日の記者会見で「日本はこれらの(ALPS処理水排出)措置については、科学的な根拠に基づいて、中国を含む国際社会に公開的かつ透明に詳細に説明している」と強調した。
中国共産党の日本への意見について、在豪歴史学者の李元華氏は「反日感情の一貫性」を指摘した。「歪曲報道によって、中国の人々に『日本政府は無責任で環境を破壊する存在』といった誤った印象を抱かせている。実際は、中国共産党の行いこそ真の環境破壊だ」と批判した。
中国には約50の原発があるとされるが、実際の処理水の海洋放出量などは公式発表していない。
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