内モンゴルの炭鉱で大規模な崩落事故 作業員ら多数生き埋め、運営会社は悪質企業

2023/02/24
更新: 2023/05/26

中国国営の新華社通信などによると、中国内陸部の内モンゴル自治区にある炭鉱で22日午後、現場の作業員や重機をのみ込む大規模な崩落事故が発生した。

「山が崩れる」巨大な崩落事故

23日午後4時(日本時間同5時)時点での死者は5人で、48人が依然として行方がわからないままだ。ただし、この数字は中国メディアの発表であるため、本当の死者や行方不明者がどこまで増えるかは分からない。

崩落が広範囲にわたっているため、坑内に取り残された作業員の捜索と救助は難航を極めている。1度目の崩落の約5時間後に、もう一度さらに深刻な崩落も起きており、救助活動の中断を余儀なくされたという。

事故現場は同自治区西部のアラシャン盟アラシャン左旗にある露天掘りの炭鉱で、高さ180メートル、幅約400メートルに及ぶ土砂の山が崩落したとみられる。

事故当時の様子を捉えた監視カメラの映像によると、現場にあった大型トラックや掘削機など数十台の車両および運転手などの作業員は、一瞬にして崩落した大量の土砂に埋もれた。

運営会社はいわくつきの「悪質企業」

中国メディアによると、事故が発生した炭鉱の開発・販売会社「新井煤業有限公司」は、過去にも認可が下りる前に工事を進めたり、計画書を無視して過剰な採掘を行うなど複数の「前科」がある悪質企業。安全管理上の問題なども含め、繰り返し当局の警告を受けていたという。

アラシャン盟政府の公式サイトによると、2015年7月16日に行われた地質検査で、問題の企業が管理する現場には山の崩落や落石、土石流などが起こりやすいといった安全上の問題が多数発見された。実際、2015年11月12日と2016年9月18日には崩落事故が発生している。

同自治区では、2020年から3年間に及ぶ炭鉱安全特別取締りキャンペーンを行ってきた。いわくつきの「悪質企業」である新井煤業は、昨年6月に専門家による現地評価に「合格」している。

現在、中国警察は調査に乗り出しており、関係者はすでに警察の管理下に置かれているという。

当局が動くのは「大事故が起きた時だけ」

今回の大規模崩落事故を巡り、現場の安全管理の甘さに加えて、人命よりも利益を優先する経営姿勢が重大事故につながったのではないかといった運営企業の責任、および地元当局の監督不行き届きを批判する声が高まっている。

この大惨事に、ネット上には厳しい批判が続いた。

「当局が真剣に取り組むのは、何か大きな事件が起きた時だけだ」「過去にも多くの問題が見つかっているのに、放置されてきた。管理当局はいったい何をしていたのか?」など無責任な地元当局への批判が目立った。

また「事件への注目度(ホットリサーチ)が下がるのが早すぎる。地元にはびこる勢力の圧力は大きいらしい。なんて暗黒な所だ」「事故が起きるたびに騒がれるが、世論の注目が薄れると元に戻るだけ。一体いつになったら庶民は安心できるのか」など、今後の展開を楽観視できないとするコメントもあった。

中共統治下の炭鉱企業は「石炭よりも黒い」

問題の「悪質企業」である新井煤業は、過去半年間だけでも209件の訴訟を抱え、複数の原告から訴えられている。十分な安全管理がされない危険作業を要求されるなど、従業員からの苦情も多数寄せられている。 

なぜこのような数々の「汚点」を抱える悪質企業が、運営を続けていられるのか。利益追求を優先して人命を軽視した操業に、なぜ監督すべき地元当局は関心を示さないのか。

実際、新井煤業は、過去に数々の行政処分が下された記録がある。直近では昨年6月に、危険作業に関する安全規制を7つも違反している。しかし先述したように、その指摘があった同月のうちに、なぜか専門家による現地評価に「合格」しているのだ。

近年、このような露天掘り炭鉱の崩落事故は中国各地で多発している。 しかし、たとえ死者を出すような大事故が起きても、運営企業はこれまでに何度も法的責任を免れてきた。

中国では、炭鉱での児童労働や人命を軽視した危険作業を行わせることに関する報道は珍しくない。 

しかし、その現状が一向に改善されないことに、米国在住の時事コメンテーター・姜光宇氏は「石炭以上に黒いのは、中国共産党統治下の中国における炭鉱の黒幕だ」と指摘している。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。