節分はオニと仲良く遊ぶもの【日本の四季】

2023/01/31
更新: 2023/01/30

季節の分かれ目を節分(せつぶん、せちぶん)と言います。もともと節分は四季それぞれにあるものですが、その風習が庶民にも広がった江戸時代以降は、やはり立春の前の節分がよく知られるようになりました。

今年は2月3日が節分で、翌4日が立春です。季節の変わり目は邪気が侵入しやすいため、その邪気(邪鬼)をオニと見なし、豆をぶつけて打ち祓(はら)うのが節分の中心的な行事です。

これは神社や寺院で行われる追儺(ついな)や「鬼やらい」といった儀式に共通する考え方で、古くは平安時代の宮中にその原型がありましたが、豆をばらばらと投げつけるようになったのは室町時代からのようです。

豆まきは今でも日本の子供たちに受け継がれています。とくに幼稚園や保育園では恒例の行事で、それはそれで結構なことですが、やはりご家庭で(できればお爺さんお婆さんと一緒に)節分の由来を静かに聞かせてあげたいものですね。

ついでにちょっと昨今の日本語についてぼやきますと、小さな子供が口にする「じいじ」「ばあば」「パパ」「ママ」はもちろん微笑ましくて結構なのですが、やはり大人に「さん」をつける呼び方も、どこかできちんと教えたほうが良いのかもしれません。自分と他者との関係を知ることも、子供にとって必要な発達段階であるからです。

さて、その他者の一つとして、目に見えない「オニ」を実在に近いものとして畏れる感性は、子供のときにぜひ体験させてあげたいものの一つです。

人間をとりまく森羅万象に霊性が宿るように、一木一草の陰にオニを発見し感知できるのはやはり子供のうちに限ります。

自分の子供時代を忘れてしまった大人が頭からオニを否定するのではなく、そうした身近な霊性と人間がどうつきあうか。博物学者の南方熊楠やマンガ家の水木しげるさんがその達人であったように、子供はオニを畏れながらも仲良く語ることができるのです。

さらには、そのオニを豆で打ち祓うことは、自分ひとりのためではなく、家族や地域社会の辟邪(へきじゃ、魔除け)のためにする無私の行為であることを、子供がどれほど理解できるかはともかく、きちんと教えてあげることが肝要ではないでしょうか。「ほかの人のためにする鬼は外、福は内」になってこそ、この子供の「大役」は完結するのです。

もちろん、貴重な食べ物である大豆を粗末にしないように、あとで集めてフライパンで煎り、きれいにしてから食べるようにしてください。

「歳の数だけ豆を食べる」というのは、明確な理由はないらしいのですが、きちんと数えてひと粒ずつ感謝しながら食べることは、子供にとって有意義な教えのように思います。

柊鰯(ひいらぎいわし)を東京生まれの筆者(鳥飼)は自分で作った記憶がありますが、皆さんの地方ではいかがでしょうか。トゲのある柊の小枝に、焼いたイワシの頭をつけます。これを玄関口に設置すると、トゲと臭いが効いて魔除けになるというものです。

そんな小さな迷信のなかにも、あながち否定できない「教育」があります。なにしろ60年経っても、そのときの光景を懐かしく覚えているのですから。

鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。