中国非公式警察署「海外110」、欧州で調査相次ぐ…異見者らに帰国要求

2022/11/01
更新: 2022/12/01

中国共産党当局が海外に非公式の警察署を設置したとの調査報告に、国際的な波紋が広がる。欧州ではオランダ、スペイン、ポルトガルなどが調査を表明したのに続き、ドイツの警察と内務安全保障担当も調査すると発表した。

中国共産党の海外活動を明らかにしてきた人権NGOセーフガード・ディフェンダーズは9月、「海外110」と題した報告書で、中国の福建省福州市と浙江省麗水市青田県の公安部が21カ国に54もの非公式警察署を設置しているとの調査報告をまとめた。

中国官製メディアはこの海外警察署について、免許書やパスポートの更新、健康診断受診の届出など公的事務を行ったり、越境犯罪に対処したりしていると説明している。

しかし、前出のセーフガード・ディフェンダーズの報告によれば、中国共産党に対する異見者に嫌がらせや脅迫を行い、強制的な帰国を求める「説得作戦」を行なっている。

海外警察署の大半は欧州や北米にあるが、少なくとも日本には東京に一つ、福建省福州市の同郷団体の住所と同じ場所に位置する。海外警察署は外国現地の華人同郷会(友好団体)と連携しており、同団体は中国共産党統一戦線部と密接な関係にあるとされる。

中国も署名するウィーン条約によると、外交事務は現地政府によって認められた各国大使館と領事館に限り提供される。こうした非公式警察署は現地の法律に違反し、国家主権を侵害している可能性がある。

海外現地の法律に則らない中国の警務活動だが、中国国内では特段隠したりはしていない。むしろ公安部の「功績」として強調している。

青田県公安部は2018年、華僑の警務によって、海外に逃亡した汚職高官や体制への異見者らを捕える中国共産党の「キツネ狩り」作戦への貢献度は「市内トップ」と誇示した。また、福建日報によると福州市公安局の海外110サービスは、全国優秀行政法執行制度で表彰されているという。

オランダ外務省も10月26日、アムステルダムとロッテルダムの計2か所の「違法」な中国の海外警察署に対する調査を発表した。

同国内で中国警察に追跡されたと訴える反体制派の王靖渝氏を、大紀元は取材した。王氏は「経済的な支援の提供」を理由に中国警察署員から連絡を受けたが、断ると、朝から晩まで一日中嫌がらせ電話が続いたと明らかにした。

オランダの中国大使館は非公式交番の存在を「認知していない」と答えた。

いっぽう、10月9日にはスペイン紙エル・コレオが、この非公式警察署に関して匿名の中国役人の証言を伝えた。この役人は取材に対して「二国間条約は非常に面倒で、ヨーロッパは中国に引き渡すことに消極的だ。犯罪者に正義に立ち向かうよう圧力をかけることのどこが悪いのか分からない」と述べた。

帰国の強要ははじめに、中国本土の家族に圧力をかけることから始まる。親戚の逮捕や恣意的な投獄、子供の学校教育を受ける権利や社会保障権利のはく奪、財産の違法な押収など。この後、脅迫を受けた家族を通じて海外にいる対象者に帰国を求めたり、現地で代理人による嫌がらせを行ったりする。

セーフガード・ディフェンダーズの報告書の共著者であるラウラ・ハース氏は強制帰国の対象者について「反体制者、異見者、宗教信仰者や少数民族など幅広い」とした。「中国共産党政権はますます無節操になりつつあり、その担当機関もますます厚かましくなっている。世界中で違法な手段をとり、それを隠蔽しようともしない」と述べた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。