衛星と通信機器を搭載した中国の調査船が、戦略的に位置するハンバントタ港で6日間にわたり滞在したことを巡って憶測が続く中、2022年8月下旬に同船舶がスリランカを出港した。
経済的にも政治的にも問題を抱える島国スリランカを訪問した遠望5号はインドを揺さぶった。インドは、この艦船と乗組員が情報収集のために秘密裏に軍事任務に就いていた可能性があると述べている。 港湾関係者がBBCニュースに語ったところによると、船は最終的にスリランカ海域で調査を行わないことを条件に停泊の許可を得た。
重さ25,000トン、長さ222メートルの調査船は、弾道ミサイルと衛星を追跡し、750キロメートル以内の活動を監視することができる。 ニューデリーのWION – TVによると、インドはハンバントタ港から北に約500キロメートル離れており、その範囲内に軍事拠点、港湾、発電所がある。 同国はスリランカ国内にも施設を有している。
米国国防総省は、遠望5号が中国共産党の軍事部門である中国人民解放軍によって運用されていると述べている。
この船が出航した後も、北京はハンバントタやその他のインド洋の港湾を掌握して、海上貿易ルートを確保し、潜在的には軍事作戦に使用しようとしているのではないかという懸念は根強い。 中国はこうした主張を否定している。
港湾関係者がロイター通信に語ったところによると、遠望5号がハンバトタに立ち寄ったのは食料、燃料、その他の必需品を含む物資を補給するためだったという。
ロイター通信によると、インドがスリランカ政府に口頭で抗議したことを受けて、スリランカは船の到着を数日遅らせた。
インドの「アウトルック」誌は、スリランカが最終的に遠望5号を受け入れたのは、経済危機にある同国の最大の支援国であるインドを軽視する行動だと述べる。 8月中旬にアウトルック誌が報じたところによると、「一連の流れの中で最も困惑させられるのは、インドの懸念に反してスリランカが船を港に停泊させることを承認したことだ」という。
スリランカで2番目に大きいハンバトタ港は、アジアとアフリカ、ヨーロッパを結ぶ主要なインド洋航路から約16キロメートルの距離にある。 この施設は約20年前に中国がスリランカに10億米ドル( 約1400億円)以上を融資して建設された。 BBCニュースによると、スリランカが融資の支払いに苦慮していた時、2017年に中国が所有する企業が港を運営するための99年間のリース契約に署名した。
このシナリオを中国の積極的な一帯一路構想の一例だという批判もある。中国はしばしば財政が不安定な国々に大規模なインフラプロジェクトの資金を融資している。 債務国が返済をできない場合、中国またはその管理下にある企業が引き継ぐという。
「中国政府に批判的な声は、ハンバントタを中国の債務トラップの典型的な例だと長い間主張してきた」と、8月中旬に米国公共ラジオ放送(NPR)が報じた。 「現在、破産し、政治的に不安定になっているスリランカのインフラを中国が軍事目的に使用するかもしれないという懸念につながっている」。
インドと中国は、戦略的に重要な島国スリランカへの影響力を巡り対立している。 貿易相手国ではあるものの、両大国は3,200キロメートルに及ぶ国境線の管理をめぐって激しく衝突し、インド洋で優位を争っている。
米国公共ラジオ放送は、「中国に批判的な人々は、中国がこの船でハンバントタで何をするかは、過去数十年に世界中で建造されたあらゆる港、高速道路、橋、およびその他のインフラに対する中国の今後の行動を示唆している可能性があると述べている」という。 「これらの人々は、中国がこの巨大なインフラのネットワークを使って、これまで海外に軍事基地を持ったことのない国々の一部を占領し、空前の軍事基地ネットワークに変換するのではないかと懸念している」という。
一方、スリランカはインフレとエネルギー価格の上昇によって大きな打撃を受けている。 2022年の大部分を通じて停電、食料不足、燃料配給が発生していると米国公共ラジオ放送は報じている。 政治的な激変もあり、 ゴーターバヤ・ラージャパクサ大統領が辞任を発表し、2022年7月に同国から出国した。 そしてラニル・ウィクラマシンハ元首相が代わって就任した。
「ザ・タイムズ・オブ・インディア」紙を含むメディアや政府が遠望5号を「スパイ船」と呼んだ。 インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は同紙に対して、遠望5号を厳重に監視するとした上で、 「近隣諸国で起こっていること、すなわち我が国の安全保障に影響を及ぼす事態はどのようなことであれ、明らかに我々が関心を示すべきことだ」と述べている。
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