モスクワ証券取引所は25日、同取引所が8月8日から為替市場で円取引を停止すると発表した。ロシアのタス通信が報じた。ウクライナ侵攻で金融機関の多くが国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されたロシアは、「非友好的」と定めた国家との取引を控え、主に中国など「友好的」とみる国との関係を深めている。
モスクワ証券取引所は円取引の停止について、「潜在的なリスクと円の計算の難しさ」を理由としている。取引再開時期は明確にせず、「再開に必要なすべての措置を行う」と述べるにとどめた。
現在、同取引所は対ロシアルーブルと対米ドルの2つの円ペアで取引を提供している。5日以前に締結した取引は履行されるが、8日以降は取引所と店頭(OTC)市場でこれらの取引を停止する。取引の担保としての日本円の受入れも止めるという。
同所は26日「『友好国』の顧客に対する株式・先物市場の機会を提供する」と発表した。「友好的な国のロシア非住居顧客、最終的な受益者がロシア法人または個人であるロシア非居住顧客に、株式および先物市場で事業を行う機会を提供する予定」とも発表した。
日本や米欧など主要国は2月のウクライナ侵攻開始以降、ロシアに対して経済制裁を科している。日本はロシア政府関係者507人に制裁を下し、銀行など200社以上に取引制限をかけた。8月1日、主要7カ国(G7)はロシアの金輸入を停止する。
ロシアは3月、米欧豪日など40以上の国と地域を「非友好国」に指定した。外国投資管理政府委員会による規定として、非友好国・地域の外国企業との取引を行う場合、同委員会など当局の許可申請制とした。
このように、ロシアは通貨を含む非友好国の金融商品を減らす方針を取っている。6月14日、モスクワ証券取引所はスイス・フランの取引を停止した。非友好国に指定されている日本も同様の措置がとられたとみられる。
ロシア証券取引所における日本円の取引高は少ない。例えば、6月、中国人民元の1日の取引高は520億ルーブルだが、日本円は2億1000万ルーブルだった。日本の制裁措置で日露貿易も減少している。
日刊紙コメルサントは専門家の話として、欧州連合(EU)がロシア金融機関に制裁を科していることから、「敵対国」の通貨からの離脱が加速したと伝えた。「市場関係者は中国人民元など他の友好的な通貨に移行しつつある」という。「7月の中国人民元の1日の取引量は250億ルーブルを超え、安定している」と付け加えた。
このほか、大手紙ベドモスチによると、ロシアの民間銀行が相次ぎ中国の国際銀行間決済システム(CIPS)に接続しており、中国との経済関係の拡大に伴う人民元での取引増加への対応を進めている模様だ。
中国税関総署の発表した5月の貿易統計によると、ロシアからの輸入は前年同月比で約8割急増し、2017年以降で最高になった。中国はロシアの原油や天然ガス、農産物の主要な買い手。
中国共産党はロシアの軍事行動を侵略と言わず、対露貿易の拡大と継続を公言している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。